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デジタルポートフォリオ2003『○○の気持ち』
授業参観レポート【第2回】
 
神奈川県 横浜市立菅田小学校 糸岡清一
授業がはじまり、村田先生は開口一番、
「今日は学級代表作品を決めなきゃいけない。」
と発言。子どもたちから
「エーッ!」
という驚きの声があがる。先生は続けて、
「決め方はどうしよう」と投げかける。
「みんなで決めよう」と言う声。

「選ぶ時の基準は?」
「おもしろい。アイデアがある。分かりやすい。工夫されている。パソコンの良さが生かされている。言葉に頼りすぎない」
などがたて続けに子どもたちから出てくる。これまでの授業のなかで村田先生がポイントとして押さえられてきたことが子どもたちに確実に意識されているなと感じる。
カーテンの気持ちの作品のひとコマ

しかし、先生はそれに満足せず、
「これだけだったらパソコンが上手な人がいいということにならない?」
と新たな課題を投げかける。一瞬子どもたちは不意をつかれたという顔をするが、
「その人らしさが出ているのがいい」
と言う声にみんなも納得。先生は「いつも図工で言っているのは、どのくらい楽しんでいるのか、がんばっているのかだよね。それをどう選考に入れていけばいいのだろうか、パソコンが上手な人ではない。」とまとめられた。
さらに「クラスで1点でいいの?」という投げかけに、
「一つに決められないよ。良さが一つになってしまう」
「旭東小5の2の図工らしさが出ているものがいい」

 
デジタルワークシートの一例    

さて、みんな代表に選ばれたそうだけれども、もっと修正したいところもあり、ちょっと自信なさそうな表情も見られる。先生は「工夫してがんばったとか、初めと変わったところを自分から主張してもいいんじゃない」と続けるが、なかなか選考基準を決めるのは難しそう。そんななかから、いくつか作品が浮かんでくる。

テッシュの気持ち: 使われるので悲しいからうれしいに変わった。
(前向きな気持ちに変化)
換気扇の気持ち: 換気扇でなければできないことに気がついた。
(気持ちの深まり)

カーテンの気持ちの子からは、
「保存をまちがえて消してしまってもめげずにやり直し工夫していくうちに、まぶしくない、大丈夫、おれに任せろという気持ちに変わってきた。がんばったから選んでほしい。」と自薦のアッピール。逆に、カメラの気持ちの子は、「雰囲気がある。最後の場面のシャッターがいい。」などと周りから評価を受けても、まだ自分では納得できない様子。自分では、好きで取り組んだことだからそんなにがんばったとは思っていないようだ。

こうして難しい戸惑いを残しながら選考は終わった。子どもたちは、自分の作品も友だちの作品も制作過程をよく知っているし、それなりの思いを感じ取っているから、どの作品にも捨てがたい良さを発見していたのだろう。それが選考の難しさとなったのだろう。しかし、その難しさに直面したことによって、また一つ子どもたちは、作品を見る大切な目を獲得していったのだと思う。
カメラの気持ちの作品のひとコマ
賞状の気持ちの作品のひとコマ
   
3回の授業を見せていただいたが、今振り返ると同時進行の連続ドラマを見たような気持ちになっている。子どもと教師が1つの作品を作り上げる葛藤を私もまた間近ではらはらしながら共有することができたからだ。また村田先生と子どもたちに会いたくなった。
 
換気扇の気持ちの作品のひとコマ

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