徳島県情報処理教育センターでは、県内公立高校および障害児教育諸学校教員を対象とした「情報科担当者研修講座」として、7月31日にワークショップ「CM研究」が実施された。
テレビCMを題材に、そこに込められたメッセージを読み取り、グループで話し合いながら制作する活動を通じ、メディアリテラシーと表現力の育成を目指すもの。講師は、富山県立大門高校の江守恒明教諭が担当した。 江守教諭は冒頭、CM研究の意図として、生徒の関心の高い題材である点や、作り手の立場を体験できること、"気づき"を持って物事を見ることがメディアリテラシー育成につながることなどを挙げ、「CMは、Communication、Collaboration、Creation、Critical Thinkingの4Cを体験できる格好の素材」と述べた。
次に、実際に放映されているテレビCMを鑑賞し、制作上の工夫などを分析した。
その際のポイントは、全体の秒数とカット数、カットごとの映像の内容やBGMなど。参加者はインターネット上で公開されているCMを見ながら、それぞれの項目をワークシートに書き込み、全体での話し合いを通じてCM表現のポイントを学んだ。
続いて、グループに分かれて制作作業に移った。今回制作するのは、外国産食品のCM。研修用に、バラエティに富んだ食品が用意された。参加者は素材を手に取り、味身もしながらイメージを膨らませ、興味を持った商品ごとに二人一組のグループに。ここでは、パッケージや味だけでなく、メーカーのWebサイトから情報を集める参加者も見られた。
次にグループ別に制作するCMの内容を議論。商品やターゲット、訴えたい内容、キャッチコピー、ナレーションなど必要な要素をワークシートに書き込み、映像づくりの基礎となる絵コンテをまとめた。
今回制作するのは、デジタルカメラで撮影した静止画像を、動画編集ソフト「Adobe Premire」を使って15秒前後のムービー形式にまとめた映像。素材の撮影など手間のかかる作業は二人で協力しながら、最終的には別々の作品を完成させることを目標に取り組んだ。
ソフトの操作をひと通り学んだ参加者はさっそくデジカメでの撮影へ。
小さなアルファベットの形をしたパスタを選んだグループは、和英辞典を片手に「DELICIOUS!」などの言葉をつくって次々に撮影していたほか、ひも状のチョコレートを題材にしたグループはこれで人の顔を描くなど、商品の特徴を生かしたアイデアが目立った。また当日は好天に恵まれたこともあり、清涼飲料やミントタブレットなど爽快感を演出したいグループは屋外撮影も行っていた。
素材の撮影後は、パソコンを使っての編集作業。「Adobe Premire」での基本的な作業の流れは、素材となる画像を読み込み、「ストーリーボード」上で絵コンテに沿って順番を入れ替えた後、「タイムライン」と呼ばれるウィンドウに書き出し、タイトル・字幕、BGMやナレーション、場面転換の特殊効果などを追加するというもの。「ここはアップで」「この次はこのカットで」と話し合いながら作業を進めるグループもあれば、アルファベット形パスタを選んだグループは個人作業に移り、「あふれるアルファベット!」「食べて覚える必殺法」と別々のキャッチコピーを字幕で挿入していた。
ソフトの操作に馴染んできた参加者は表現の細かい部分にも目を配り始めた様子で、インターネットで草原の写真をダウンロードし、これを背景にしてクロマキー合成することで、動物形のビスケットが歩いているように見える映像をつくったグループもあった。
完成後は、各作品を全員で鑑賞し、相互評価を行った。アルファベット形パスタや動物ビスケットのほかにも、味噌汁や冷奴とプレッツェルの写真を合成した楽しい作品もあり、会場からも大きな拍手が送られていた。
「冒頭に述べた4Cのできる人材を企業は求めている」と講師の江守教諭。「4Cを身につけるためには、相手の立場に立って考える能力や、知識を応用する力・知恵が大切。こうした力を養ううえでは、今回のように他人に見せる作品をつくる訓練は貴重な経験になる」と語り、ワークショップを締めくくった。 |