デジタル表現研究会
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画像表現ワンポイントアドバイス
インターネットの普及によって「デザイン」の領域はこれまでより格段と広がってきています。このコーナーではそんなデザインのこれからを語りながら、画像表現の向上に欠かせない、画像の作成・加工、修正などの必須テクニックを直伝指導いたします。
猪股裕一
多摩美術大学造形表現学部デザイン学科教授
第2回 これからのWebって?
「高齢化時代がやってくると・・・」
インターネットから親指i-モードメールへ、ISDNからあっという間にADSL。今や、パソコンを知らないオトナ達が、いち早く覚えてしまった子供たちから、教わる時代なのかもしれません。インターネットが一番発達している国は北欧だそうです。なるほど、雪に閉ざされている生活には便利な道具。そう考えると外にでるのが億劫な老人とって、家に居ながらにして買い物ができ、必要な情報を得、メールで友人とコミュニケーションを深めることができる、便利というだけでなく大きなアドバンテージを持つ道具と言えましょう。ですが、日本では「インターネットなんていまさらいいよ!」と多くのお年寄りは言うでしょう。
しかし、小生のような団塊の世代が、あと6、7年もすると60歳代を迎えます。どうなるかと言うと、上述した北欧の例のように、ほんとにみんなネットを使う時代がやって来るのです、確実に。国を上げてのeガバメント構想にはじまり、医療、福祉分野など多岐にわたる変革の結果、個々人においてもネットを使う機会が飛躍的に伸びるのは間違いありません。今は数%にも満たないネットショッピングは数十%を超えているでしょう(おおむね10%を超えると大ブレークします)。つまり誰でもかれでもネットで何か「している」時代に突入するのです。

さて、ネットとは「知る」と「知らせる」タイプ、「買う」と「売る」タイプに大別できるようです。ただし「知らせる」にはいくつかのメディア特性の違いがあります。ニュースのページ、組織やコミュニティのページ、個人のページなどがあります。そこには微妙に違った見せ方があります。ニュースならヘッドラインが最初でしょうし、個人ならその個性や志向がよく表されたトップでしょうし、コミュニティなら何のコミュニティかがわかるデザインだと思います。

そこで発信側、つまり「知らせる」・「売る」側を、未来も見据えながら考えてみたいと思います。
「氾濫するWebサイトのなかに埋没しないために」
まず最重要なのは、これは「何のサイト」なのかを一瞥(at a glance)しただけでわかることです。それには何を知らせたいのかをはっきりさせることです。それが見失ってないけない「骨」なのです。そして、新しくやって来て頂いた訪問者を想定したデザインにしましょう。丁寧に、もてなしの心を十分にもった、わかりやすさを大切にして下さい。これが言うは易く、行うは難しなのです。

よく陥りがちなのが、地域コミュニティや個人だからといって内輪ネタですましてしまうデザインです。(自己満足型)また、優れたデザインのサイトではとても身勝手でストイックなサイトが多く紹介されたりしますが、これには挑戦しないこと。リニューアルのときまでとっておきましょう。そのときまでに、どこまで「引いた(シンプル化した)」見せ方ができるかを研究しておきましょう。実はシンプル・イズ・ベストなのですから。

つぎに、訪れて下さった方に満足していただけるように設計しましょう。「かゆいところに手が届く」デザインです。きっとこれに興味を持たれたら、このことも知りたいだろうと想像する力のことです。必要なら図解して、拡大できて、関連リンクを列挙してあげたり、ということです。
つぎに大切なのは、何をどの周期で更新するかです。「三日坊主」にならないような更新予定を作ることも大切です。ネットの中には古いまま腐ったサイトがなんと大量にあることでしょう。それって、そのままずっと、なにがしの料金を払い続けていて、何の役にも立たなかったりするのですから。そして更新された内容がトップページにも反映できるような構造はとてもいいと思います。くれぐれもネットのゴミを作らないこと。

ちょっと話はそれるかもしれませんが、Webの機能には「パーソナライズ」という手法があります。よくあるのは「○○さんこんにちは!」というやつです。これは訪問者のログと過去のログのデータベースを参照して、それなりのメッセージを訪問者にリフレクションするものです。多分この機能(エンジン)がもっと廉価で手軽になれば(?)、「○○さん、この前来ていただいたときから、こんな話題が増えましたよ!」なども可能になります。

最後に、一方通行のようにみえるこのメディアで、いかにリピーターを呼び込むかがWebとしての生存価値を高める鍵です。そのためになにより大切なのは訪問者にとっての魅力的な内容です。「掲示板」という手法を活用し、参加型コミュニティを形成するのも一つの手だてです。手はかかりますが「メルマガ」も効果的といえます。そして訪問者の声で自動更新するなどの設計もあるでしょう。

要は腐らない(陳腐化しない)設計をできるか否かです。しかも自己満足ではなく訪問者の要求を満たし、かつ無理のない設計を企てることです。
猪股裕一 (いのまた・ゆういち)
1948年東京生まれ。日本大学物理学部応用物理学科卒。1989年、アップル・コンピューター・ジャパンの正式認定を受け、日本初のマッキントッシュのユーザーサポート組織MDN(Macintosh Designers Network)を創立。同年、世界初のデザイナーのためのマッキントッシュマガジン『MdNマガジン』創刊する。日本グラフィックデザイナー協会会員。ジャパン・パブリッシング・コンソーシアム理事長
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