北海道の宮脇先生からご紹介いただいた北海道穂別町立和泉小学校の山田です。宮脇先生とは、私が主催する「小規模校ネットワーク」を通して知り合いました。また、宮脇先生を紹介した柳瀬先生と私は稲里小で同僚という関係でありました。
その稲里小、そして私の現在の職場である和泉小、ともにへき地複式小規模校であります。このクラスサイズの学校にとって、学習者同士の話し合い活動の場が少ないことは長年の課題とされてきましたが、近年のネットワーク環境の整備と情報教育がもたらす学習環境の変化はそれらの課題を解決しつつあると実感しています。
その一つは学習者同士の話し合い活動がもたらす「深い理解」です。柳瀬先生と宮脇先生のクラスの子どもたちの間でやりとりされたBBSのログデータと周辺事情の聞き取り調査をしたことがあります。結果、子どもたち同士が、ある事象に関してわからないなりに相手に何とか伝えようとしているうちに自分自身の理解が深まったり、また、相手の子どもたちにもストンと理解できていたということが確認されました。
子どもの理解というのは不思議なもので、大人にしてみると稚拙だなあと思うような説明でも、子ども同士の間では「伝わっている」ことが多いようです。これは普段の学習環境である少数の学習者と教師間では生起しにくい理解であると考えます。
このような「話し合い活動」が深い理解を得られることから、今まで以上の頻度で学習場面に取り入れてきましたが、そうすることにより思いもしない変化が生まれてきました。
それは、ネットワークを活用した協同学習によって、例えば「トンボについての知識を得る」という当初の目的から「トンボの種類の同定する」というより具体的な目的の達成へとシフトしていったということです。
これは現実の社会生活上の仕事と似ています。大人の仕事の目的は「知識を得る」ことだけではなく、それらの知識が埋め込まれた「美味しい米の生産」であったり「時間通りの配送」であったりするわけです。
これは総合的な学習の時間の実施の影響も関係する学習の変容であると思いますが、子どもたち同士の話し合い活動を容易に実現できるネットワークの活用による学習環境の変化も要因と考えられます。
こういった形の子どもたちの能力は状況に埋め込まれており、その状況にはコンピュータなどの教育機器の活用や情報教育が大きく存在します。
つまり、情報教育はそれ自体を単体で取り上げて教科として扱うよりも、課題解決という状況に埋め込まれている存在と認識すべきであると考えます。
ここで、ふと「学習」とは何なのだろうか、という疑問が湧いてきます。ネットワークを活用した協同学習の実施が、
1.他者と協力して学習すること
2.コンピュータなどの道具付きの知識の存在
3.知識はその状況に埋め込まれていること
といった新たな学力観、学習観をアピールすることとなりました。それが社会一般の姿であり、社会が求める人材に必要な能力であるならば、そういった革命的な変遷に持ちこたえる評価や入試制度・社会の合意形成を急ぐ必要があると考えます。
一教師の立場ながら、上記のような改革に尽力できればと思う今日この頃です。
私がバトンタッチする方は北海道北見市立東相内中学校の竹花史康教頭先生です。竹花先生は私の初任指導教官であり、かつ大学院の同じ研究室の先輩、そしてCAI、知的CAIのエキスパートであります。CAIにかける熱い想いを語っていただけると思います。
2003年02月12日 |