実際に企業が使用するパンフレットを、子どもたちが総合的な学習を通して作り上げる「ホンモノパンフをつくろう」などを説明、パンフレットが企業にとって重要なことを「このパンフレットで製品が売れなかったらおじさんは給料がもらえないんだ。それぐらい真剣にパンフレットを作っているんだ」と訴える。また、みさきのパンフの中で使われていたコピーが人気ゲームソフトのタイトルの一部だったことを指摘し「自分たちのオリジナルをつくりだして」と著作権の問題にも触れた。
授業を計画した段階で中川助教授、北川さん、同校教諭の間では役割分担が明確になされていた。助教授はプロモーター(紹介役)、アドバイザー。北川さんはクライアント(依頼主)、企業の人間として厳しい要求をするという役割だ。
社会・企業を垣間見る
北川さんから示されたパンフレットを作る上でのポイントは二つ。
1.読み始めてもらうには引き付けなければならない。
2.誰のための(誰を対象にした)ものか。
子どもたちは北川さんの話から社会や企業を垣間見て、意欲とともに「私たちにできるかな?」という不安が生まれる。事の重大さが分かってきたようだ。
中川助教授は子どもたちの困惑を一つひとつ整理するようにリードしていく。「手にとってくれる」「一発でわかる説明」「読んだら欲しくなる」「そして買う。これがゴール」。「困ったら、北川さんや僕に電子メールを送ってくれたら、返事するよ」とも。
パンフレットのページ数は4ページ。まず構成を考え、訴求ポイントを見付けだすことが重要だ。情報収集、選択、表現…パンフレットづくりには実にさまざな力が要求される。これからすべきことのイメージがはっきりしてきたのか、子どもたちの表情も少し和らぐ。
担任の山田康子教諭が「どうする? 責任重大だね。でもやるしかないね」と声を掛けると元気な返事が返ってきた。中川助教授も「日本中の5年生の中で本物の商品のパンフを作るのは君たちだけだと思うよ」と後押しする。「どんな写真を載せようかな」「知恵を絞らないといけないな」と、楽しみで仕方がない様子。これで契約成立。いよいよホンモノパンフづくりがスタートする。
産学融合の好事例に期待
同校では、平成10年度からコンピュータを活用した教育活動をティームティーチングなどで推進してきた。今年度の教育活動のテーマは「伝え合う力」。その中で5年3組はパンフレットづくりを課題にしてきた。
今回の学習活動は、年末までで約20時間を予定。まずPhotoshop Elements 2.0で作品を作り、その機能を整理、10月末をめどにパンフ案をアドビシステムズ側にプレゼンテーションする。以降はアドバイスを受けながらブラッシュアップし完成を目指すが最終的な採択の決定は、本物のパンフレットとして耐えられるかどうかという観点で厳しく行われる。不採択もあり得るのだ。
北川さんは「メーカーの視点でなく、ユーザーの視点で作るという点には期待しています。またロゴの使用規則など、通常のパンフ作りの型にはめないでやってもらっていい」と子どもの発想に期待する。
中川教授は「中間地点での評価が重要なポイントになるでしょうね」と話す。また「こういう活動をする場合『子どもにとって何が学びになるか』を理解してくれる人が関わることが大切」とも強調。
子どもの活動の成果物が実社会で使われるという点とともに、さまざまな人が立場・役割を明確にして総合的な学習を支える産学融合の好事例としても期待できる。
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