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著作権ワンポイントアドバイス
第8回 【「ネチケット」について】
「情報モラルの森」の解説は、著作権、セキュリティ、プライバシー、情報リテラシーと進み、今回は、「ネチケット」について、私たちの考えをご説明します。

メールや掲示板に見るネチケット違反

ネチケットとは、ネット上のエチケットの略で、掲示板やメール、その他インターネットを使う上でのマナーといった意味で使われます。法律ではありませんから、もちろん罰則があるわけでもありませんし、ルールというほど強制力のない内容も含まれます。掲示板やWEBサイトそれぞれが決めているローカルルールを指す場合もありますが、ここでは、一般的なインターネット上のエチケットといった意味で使います。

具体例を挙げましょう。ある沖縄のガイド情報を掲載しているサイトには、たった1行だけのメールが送られてくることがよくあるそうです。内容は、「今度沖縄に行くのでおいしいお店を教えてください。」といったものや、「沖縄が大好きです。どうやったら沖縄に住めますか。」といったものなどで、このサイトの管理者は、答えようがないと嘆いています。おいしいお店と言っても、若者なのか年輩の方なのかで好みは違うでしょうし、そもそも沖縄のどこに来るのかも分かりません。国際通りの○○がお奨めです、と簡単に一言返信すれば受け取った側は満足するのかも知れないと思いながら答えとしても突き放したようでもあり、結局、サイトに掲載しているお店から好みのものを選んでください、と回答するそうです。

この例では、メールを送った側が期待したコミュニケーションにはなっていないと思いますが、そもそも、送り手側が自分のことを何も書いていないことが問題です。メールが気軽なメディアであるとはいえ、初めて送る相手に対して挨拶さえありません。しかも、自分で調べられる情報があるにも関わらず、どこまで自分で調べたかが不明で、漠然としすぎているのです。

メールの場合は、相手を怒らせることになっても二人だけの問題で済みますが、掲示板ではそうはいきません。実際に、そこここの掲示板で、喧嘩が起こっているのを目にします。原因は単純で、誰かの発言内容を否定したとかしていないとか、それに、書き方がぶっきらぼうだったからか、過去の発言を読まずに質問ばかり繰り返されることへの苛立ちなどなど。いずれも、発言の前に少しだけ、これが読まれたときの感情を推測するだけで防げるのではないかと思います。掲示板の過去の発言を少し読んでみて雰囲気をつかんでおくことも必要かも知れません。

情報の森は根っこで繋がっている

ネチケットに反する個々の例をあげていくとキリがありませんが、こうしたコミュニケーションの欠如がなぜ問題になるのか、つまり、なぜネチケットを私たちが「情報モラルの森」に含めて、他の「木」と同列にしているかいるかというと、ネチケットに留意することが、情報リテラシー教育の目的でもあるコミュニケーションの質を高めることにつながると考えるからです。また、同時に、ネチケットに反することは、プライバシー侵害やセキュリティの問題にも発展しかねない面もあり、そうした危険を回避する意味でも、留意しておくべきものだと思います。

昨年、オークションサイトで、他人のIDとパスワードを使ってオートバイ16台(1,300万円相当)を落札するという事件がありました。他人のIDを使った人物は不正アクセス禁止法違反で逮捕されましたが、この犯人は、オークション落札後にキャンセルされたことに対する腹いせで相手のIDを盗んだとのこと。IDは、取引の際に知り、パスワードは、IDを元に数字の組み合わせを変えて解読したのだそうです。オークションの問題をネチケットとするには無理があるかも知れませんが、恨みを買うという点では、ネチケット違反が原因になる可能性を否定することはできません。そして、一度、否定的な感情を持たれた場合、この例のように、IDとパスワードを盗まれるというセキュリティの問題に発展しかねないのです。

この例では、IDとパスワードの盗難が、オークションサイトで巨額の購入ということで発覚しましたが、ストーカー的犯行としてメールを盗み読まれるという事件はたびたび報道されています。上の例では、パスワードはIDから解読したそうですが、掲示板にメールアドレスを記載すれば、ここから解読される危険性もあります。メールアドレスとパスワードが知られれば、ほとんどの場合、メールは簡単に盗み読まれることになります。これまで報道された事件では、情報が漏れていると推測されるようなことが起こったことで発覚しているようですが、単に知られていないだけで盗み読まれているメールは多々あると想像できます。

以前、セキュリティの回でも触れたことですが、メールをはじめパソコンの中にあるデジタルコンテンツは、盗み読まれたとしても実体がなくなるわけではなく単にコピーが持ち出されるだけで、その被害に気づきにくいという特徴があります。こうした目に見えない怖さから守るためには、パスワードは解読しにくいものにした上で頻繁に変更するなどセキュリティ対策をしっかり行うことと、無用な対立を避けるためにネチケットには常に配慮しておくことが必要だと思います。

豊かなコミュニケーションのために

ただ、基本は、ネチケットと言ってもハウツーではなく、コミュニケーションを行う相手を慮る気持ちの表現として考えて欲しいと思います。そのためには、インターネットの世界だけで考えるのではなく、たまには会って話そうと、実社会での豊かなコミュニケーション能力をまず養って欲しいと考えています。その上で、ネットならではのコミュニケーションを楽しめるようになればいいのではないでしょうか。
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