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著作権ワンポイントアドバイス
第9回【情報モラル10ヶ条】
前回まで、「情報モラルの森」を構成する著作権やプライバシー、セキュリティなどについてそれぞれ説明してきましたが、ACCSでは、情報モラルについてのスローガンをまとめた「情報モラル10ヶ条」というものを作っています。これまで説明してきたことのまとめとして、今回は、これをご紹介しましょう。
 
情報モラル10ヶ条

1. これからは情報が価値の中心。発信者としても受信者としても、情報を見極める目が問われる
2. また、年齢や社会的地位などよりも、情報がその人の評価を決める。自己表現、意思表示の力を磨こう
3. 同時に、相手の気持ちを想像し、尊重する力も
4. 情報のデジタル化は諸刃の剣。デジタルデータの取り扱いには細心の注意が必要
5. 特に、人の情報(個人情報、著作物)を扱うときには慎重に
6. また、一度、ネットワークにアップされたものは、永遠に回収されないことを知っておこう
7. 未知の人との出会いは刺激的だが、当然、それだけリスクも高い
8. また、ネットワークでのコミュニケーションは、壊れやすいことも知っておこう
9. 特に電子メールは便利で手軽なメディアだが、その分、コミュニケーションが「雑」になりがち
10. たまには会って話そう
 
個性を大切にコミュニケーション能力を高めよう
 
最初の1〜3は、「情報社会を生きる力」をテーマにしたもので、情報を使いこなす力とともに自己表現、意思表示の力をつけコミュニケーション能力を高めよう、ということを言っています。ただし、情報を使いこなす力と言っても、コンピュータの操作能力のことではありません。一般に、情報教育と言うとコンピュータ利用のハウツーを想像しがちですが、私たちが考える情報教育の目的は、コミュニケーション能力を高めることだと位置づけています。現在のパソコンの操作を覚えても、10年後の情報機器の中心は小型のPDAかも知れませんし携帯電話かも知れませんし、腕時計型コンピュータかも知れません。日進月歩の情報社会にあって、単に今の情報ツールの操作方法を勉強することは本質的なことではなく、むしろ、情報ツールの種類が変わっても、いかに人とコミュニケーションを取ることができるかを学習して欲しいと考えています。ですから、パソコンの操作に自信がないといった先生方も、自信を持って子供たちと一緒に情報モラルについて考えて欲しいと思います。

2には、「自己表現、意志表示の力」とありますが、これは、自分の個性を表現し、自分が考えていることを他人に伝えられる力という意味です。個性とは自分だけのオリジナルな考えのこと。自分だけのオリジナルを持とうとすれば、著作権について理解することは簡単です。なぜなら、著作権とはオリジナルな表現を権利として守るということだからです。オリジナルな考えや情報を持とうと努力すること、言い換えれば、オリジナル情報を生み出す苦しみが分かって、その上で、相手の同じような努力や苦しみ、気持ちを想像し尊重することができれば、著作権思想を理解することそのものと言ってもいいでしょう。その意味でも、オリジナルな考え、すなわち個性を持ち、それを表現し意志を表すことは、とても重要なことだと考えています。
 
デジタル社会の危険性
 
4〜6は、「デジタルのメリットとデメリット」についてです。デジタルデータの取り扱いには細心の注意が必要とありますが、これは、著作権、プライバシー、セキュリティなどに及びます。前回までに何度か触れてきましたが、例えば、簡単にコピーできるからと言って著作権を無視し続ければ、突然、犯罪者になることは十分にあります。実際に、ACCSが手がける刑事事件で摘発されているのは、43歳会社員だったり27歳公務員といった、普段はごく普通の社会生活を送っていると想像されるような人が多いのが現実です。

コピーの問題は、著作権だけではなく肖像権を侵害する場合もあります。簡単にデジタル写真が撮れて簡単にホームページに掲載できるようになった現代、そのこと自体は便利なことに違いありませんが、その写真の扱いを間違えれば大問題になる危険性も同時にはらんでいることは、よく理解しておいて欲しいと思います。また、他人のコンピュータの中や携帯電話の住所録をのぞいたりすることはプライバシーを侵害することになりますし、裏返せばセキュリティ問題でもあります。特に、6にある「ネットワークにアップされたものは、永遠に回収されない」ことについては留意しておくべきだと思います。さらに、デジタルの危険性は、盗まれたことに気づきにくい点にあります。ネットワーク経由で、あなたのコンピュータの内容が盗み読まれることもあり得ますし、だからこそセキュリティ対策が必要になります。
 
たまには会って話そう
 
7〜10は、ネットワークの限界についてです。出会い系サイトの事件の例を出すまでもなく、先生方にとっても頭の痛い問題かも知れません。掲示板ではしょっちゅう喧嘩が起こっていますし、ASK ACCSに寄せられる質問の中には、ネットで知り合った人にプライバシーを暴露されたといった切実な問題も含まれるようになっています。ネットワークの良さは良さとして認識することは必要ですが、その前に、人間同士のコミュニケーションの大切さを知って欲しいと思うのです。たまには会って話そう。これが、ネット社会の中でも基本だと考えています。

ここにあげた「情報モラル10ヶ条」は、ACCSが作った叩き台です。ぜひ、先生方それぞれが教室に相応しい10ヶ条を考えるきっかけにしていただきたいと思います。なお10ヶ条は「著作権・プライバシー相談室〜ASKACCS」にも掲載されています。プレゼンテーションできるようにつくってありますので、ぜひご覧ください。

さて、「情報モラル」を分かりやすく解説したミニブックが発売されました。ACCSが執筆・監修したダイヤモンド社「早わかりブックス」シリーズの『情報モラル入門2003』です。昨年刊行された2002年度版に加え、知的財産基本法や住基ネットなど、この一年の新しい話題を盛り込みました。ACCSホームページでも販売しています。情報モラルについてより深く考えたいという方は、ぜひお買い求めください。
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