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キーワードで読む情報教育 17
続・学校間交流
〜インターネット環境の構築・行政面からの課題〜
レポート1
面と向かって話がしたい!!
山中昭岳
鳴門教育大学大学院 総合学習開発コース
(和歌山県熊野川小学校)
6年生の国語科の単元に「やまなし」という宮沢賢治の童話があります。芸術的結晶である「やまなし」を読み、その表現を味わい、イメージを豊かに広げ、作品の世界に浸ることを意図しています。そして、主題について考えるという物語の読みの基本的技能・能力のいっそうの成長を目指す単元です。

しかし、この「やまなし」は宮沢賢治独特の表現、比喩などが駆使されており、子どもたちにとっても、そして教師にとっても容易に読みこなせるようなものではないのです。作品のもつ柔軟な発想や豊かな想像力を誘う表現が子どもたちの意欲をかき立てる魅力のある作品ではあるのですが、教師1人、そして20名弱の子どもたちだけで考えるのはもったいないと考えました。

以前より、子どもたちが自由に多くの人たちと交流するのに活用していたインターネット上にある電子掲示板があり、その中で三重県の小学校、横浜市の小学校の3校でこの「やまなし」の授業をしようということになりました。

この「やまなし」の授業を電子掲示板により3校で行っていくことで、それぞれの学校の先生方との打ち合わせはとても密に行いました。教師専用の電子掲示板での情報交換はもちろんのこと、電子メール、またテレビ会議でも頻繁に打ち合わせを行いました。このことは、まさに学校の枠を越えたT・Tでした。それを子どもたちが実感したのは、他の学校の先生から発問がやってくる問いのときでした。いつもは担任からの発問しか体験がない子どもたちでしたが、遠く離れた学校の先生から指令みたいに発問が飛んでくるのです。「これって私ら答えていいの?」と戸惑いながらも、他の学校の子どもたちも自分たちと同じように指令を受け、どんどん掲示板に書き込んでいる様子を見て、負けじと書き込んでいました。

「クラムボンって何だろう?」「谷川の深さは?」「イサドとはどんな町をイメージする?」等々、これに対して子どもたちはどんどん自分の考えを書き込んでいく。そして、そこから自分の似た考えの人たちにコメントを書いたり、また全然違う人の意見にもどんどん自分たちの意見をぶつけていくなど、掲示板の中で活発な意見交換が行われました。そのうちに「コンピュータで書くのってうまいこと言えん。面と向かって話したいわ!!」と言い出しました。

さあ、ここでテレビ会議の登場です。書くよりも口で言いたいという子どもたちが、3校あわせて面と向かってお互いの意見をぶつけあうのです。今まではコンピュータの向こう側にいるのだが、顔が見えずはっきりと意見が言えなかった子どもたち。テレビ会議によって今まで名前しか知らなかった人の顔を見ることができ、ああ、この子があの意見をいっていたんだなと相手をしっかりと理解することができました。
やまなしを紹介 面と向かっての話し合い
子どもたちはいろいろと自分の考えを裏づけるような証拠品(?)を調査し、手に入れていきました。例えば、本物のやまなしを手に入れ、その大きさや香り、味をテレビ会議で表現しました。本物のやまなしは相手2校とも「ほしい!!」の大合唱でしたので、送ることにしました。そのときに添えた手紙では、「くさってるから食べないで!!」「お酒のにおいがするよ。」「思ったより小さかったよ。」など本当に気軽な感じで手紙がかけていました。

この「やまなし」の交流が印象に大きく残り、卒業制作では畳の大きさもある共同版画の題材にこの「やまなし」を選びました。授業を振り返りながら、みんなで協力してつくっていきました。完成したときの喜びはいいようもありません。「これ卒業式の時に飾ろうや!!」との声、そして「せっかくやからみんなに送ったろう!!」となりました。共同版画を2校に送り、卒業式ではメッセージの交換、そしてこの畳大ある大きなやまなしの版画が本校はもちろんのこと交流校にもかざられていました。

国語の1つの単元から広がった学校間交流。子どもたちの中に多くの人たちと関わる楽しさが残った実践でした。
 

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