神奈川県横浜市にA小学校があります。屋上に上がると、横浜港に展開する「みなと未来21」が一望できます。近くに流れるJ川というと、お世辞にもきれいとはいえない状況です。そんな小学校の6年生が「川」をテーマに総合的な学習を始めました。
同じ神奈川県の西北部、ダムでせき止めた湖のほとりにB小学校が建っています。全校児童が10人以下。朝の歌は校長以下職員全員で歌います。その中の5年生と6年生の3人が「川」をテーマに総合的な学習を始めました。B小学校の前にあるダムから、A小学校のある地域に水道が引かれていることを、4年生の時に勉強していました。そこで、縁あって、「川をきれいにしよう」というテーマで交流学習がはじまりました。
B小学校の周りにある川はもちろんきれい。でも、B小学校の子どもたちは自分たちのまわりの川の様子を、「そんなにきれいだとは思わない。だってゴミがいっぱいあるんだもん」といいます。A小学校の子どもたちがそれを聞いて、「そんなにきれいなのにどうして?」とびっくりすることばかり。交流のメディアにはメールも使いましたが、主なものは週1回の「テレビ会議」でした。
最初はゲームをしたり、プロフィールを書いたファイルなどを送りあったりして友好を深めました。そして、それぞれの学校から、自分たちのそばの川の情報を伝えあいました。BODパックテストの結果、ペットボトルに入れた水、ビデオレターの交換などもやりました。実際に、相手校を訪ねたこともありました。こうして交流が進んでいきました。 |
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そんな子どもたちにこんな質問をしました。「川のことを調べる活動を通して、あなたが知っていることが横10センチの長方形の大きさだとすると、だれからどのくらいのことを教えてもらいましたか?ようかんやカステラを切るように線をひいてください。」このアンケート結果を集計してみたところ、2つの学校の反応に違いがでてきました。 |
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A校は、自分で川に行って調べたこと、本やインターネットとB校から得た情報をたよりに活動を進めていました。その他には、自分の学校の先生、同じクラスの人がふくまれました。B校では、「地域の人に聞いたこと」の割合が大きいのが特徴で、自分で調べたことを大切にしていることが読み取れました。A校から得たものも参考にしているようです。ただ、本やインターネットから得た情報は案外小さかったのです(このグラフの示す時点では0でした)。
こうした結果を両校の担当の先生に見せました。すると、A校の先生は、「やはり、地元のことを調べているのだから、地域の人へのインタビューを増やした方がいいのかしら」と思ったようです。また、B校の担当の先生は、「もっと視野を広げてインターネットを利用して調べる学習も増やさねばならないかな」と考えたのでした。
A校B校ともに、インターネットで情報を検索する環境は十分整っていました。ただ、B校の子どもたちにとって、インターネットは捨てられたものではなく、ある程度認められながらも自分で聞いてきたことがらが、その子の意識の中に大きくとどまったのだと思います。
B校のある子は、地域に住む方から情報を得るために、お酒と饅頭を持って訪ねていったそうです。おじさんにはお酒を飲んでもらい、その前で自分は饅頭を食べながら話を聞くというスタイルで活動を進めたのだそうです。そうした「足で稼いだ情報」を大切にしていたようなのです。
「情報収集にはインターネット」とすぐに考えがちな昨今ですけれど、インターネットはあくまで方法のひとつの手段であると考えていたいものです。 |