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音楽とコンピュータ
レポート1
マルチメディア通信で広がる生徒の音楽表現
田中龍三
(大阪府 大阪教育大学教育学部附属池田中学校)
田中龍三
はじめに
音楽が表現される場に「他者との関わり」の場が設定されると、両者の間に自分の持つ「文化」と相手の持つ「文化」とのぶつかり合いが生じます。そのような場では、自分が表現する音楽について自分の「思い」や「考え」を持っていなければ相手とのコミュニケーションやコラボレーションは成り立ちません。「他者と関わりあう音楽表現の場」を設定すれば、生徒の「自分の音楽(自分の表現)」を意識する機会が増え、生徒が「自分の音楽に対するこだわり」を持つようになります。このようにして生徒の音楽表現が単なる既存文化の模倣に終わらず、内面を表現する場となることをめざしました。さらに、本校では、音楽を通した国際交流授業の中で、生徒がコンピュータをコミュニケーションや情報交換の道具として主体的に使いこなしていく姿勢を身につけさせることも目的としました。

楽器としてのコンピュータ
本校で音楽の授業にコンピュータを導入したのは、平成3年度からです。当時は大学から払い下げてもらったコンピュータ2台でスタートしました。現在はインターネットに接続されたコンピュータ8台を、創作の授業を中心に希望者のみに使用させています。本校ではコンピュータを「弾き直しのできる電子楽器」と位置づけています。コンピュータを使えば、音楽は好きだけど楽器が演奏できる技術が不足しているために積極的に参加できなかった生徒も活躍できます。
効果としては、「グループによるアンサンブル曲の創作 」などで、今までピアノの得意な生徒が、自然とリーダーになっていたのが、コンピュータが得意な生徒がそれにとって代わったりといった現象も見られました。しかし、最も効果が実感できたのは、鍵盤楽器が演奏できないために、積極的に表現活動に参加しようとしなかった生徒が、コンピュータを使い、じっくり時間をかけ、書き直しを繰り返しながら曲作り(データーの入力)を行う姿を見たときです。そして、彼らはプレッシャーを感じずコンピュータという楽器に演奏させ、「自分の作ったメロディーやハーモニー」を聞いて楽しむといった姿も見せてくれました。 

テレビ会議を活用したドラマコラボレーションへ
平成9年5月から始まった姉妹校ホーリークロス・コンヴェント・スクールとのドラマコラボレーションで、本校の生徒がドラマの何場面かの音楽を担当することになりました。ドラマの物語は、若い二人の男女が親の決めた政略結婚を乗り越えて結ばれるといったもので、各場面は緊迫した場面や滑稽な場面など、バラエティーに富んでいました。ドラマの音楽を本校の生徒がコンピュータで担当するようになった理由は、本校の生徒に、MIDIによる音楽作りの経験があることと、作った音楽をMIDIファイルに変換し、電子メールで瞬時にホーリークロス校に送ることができるからです。できあがった音楽をその都度電子メールでホーリークロス校に送り、それぞれのシーンの練習に使えるようにしました。本校の生徒たちは、最後のシーンが「意に添わない結婚式」の場面だったので、登場人物の心理状態を表すために曲を短調で作ったのですが、共同上演の指導のために来日したホーリークロス校の先生が、「全体のストーリーから考えてこの結婚式は暗い雰囲気ではいけない。」という理由で、別のシーンの音楽と入れ替えるように指導を行ったこともありました。担当した生徒たちは残念に思いましたが、共同上演が終わってから、イメージの設定が問題になった訳で、イメージが表現された音楽自体は素晴らしかったと誉めてもらい、音楽作りに関しては自信を深めました。

おわりに
このように、メディアを通して異文化をもつ他者と関わる音楽表現活動の場で、生徒たちは意欲を持って音楽表現活動を行いました。教師の支援としては、生徒が、関わる相手とコミュニケーションをとりやすいメディア環境および音楽表現の場の設定が主になりました。生徒は「他者と関わる音楽表現」を体験することにより、「自分の音楽にこだわる姿勢」と、様々な情報を的確に操作および処理ができる力を身につけてくれたと思います。
 

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