2002度から総合的な学習が本格実施となり、各学校で模索が続いている。外部からの人、もの、ことを取り入れ、さまざまな工夫もされている。しかしその一方で、学習活動らしきものが行われてはいるものの、総合的な学習の時間をこなしているだけの表面的な実践が少なくないのでは、という危惧をもっているのは筆者だけではないだろう。すでに、「うちの学校ではカリキュラムができたから、次は教科の評価作りだ」とばかりに、過去のことのように考えている教師もいるようだ。いったい総合的な学習で何が学びとなるのか、そこをしっかりとおさえ、教師自身が振り返って(それは、今の「はやり」に流されるような評価の形式ではなく)いかなければ、それこそ「時間の無駄」になってしまう。つきあわされる子どもたちはいい迷惑だ。総合の学習活動の肝は、いかに子どもにとって「切実な課題と出会い、追究していくか」である。
「ホンモノパンフレット制作プロジェクト」は、まさに「ごっこ」ではなく、「本物」にいかに出会わせ、それを学びに転化していくかということに正面からぶつかっていく実践だ。ただ、そこでは担任以外の人がどのようににかかわり、どんな「しかけ」をしていくかということがポイントになっていく。
本実践では、4人のちがう立場の大人がかかわっている。
・プロジェクトコーディネータとしての筆者
・専門家(依頼主)としての北川久一郎氏
・校内情報教育TTとしての山本直樹教諭
・学級担任としての山田康子教諭
今回は、筆者と北川氏がこのプロジェクトの仕掛人だ。もちろん、教師がこういうことをやりたい!とイメージをもち、それに見合う外部人材を探してくる場合も多い。しかし、「見合う人材を探す」「学習の意味を理解して関わってもらう」というところがネックになる場合が多い。誰でもいいから農家の人を連れてくれば、米作りの子どもたちの学びになる場が提供される、とは限らない。多くの場合は、「ありがたい話」をお聞きしてオワリになってしまうのだ。
上記の役割の中で、コーディネーターはあまりなじみがないと思うが、実はとても重要な役まわりだ。多くの場合、これは教師が担う。しかし、学級担任がこの役割を負うと、とたんに忙しくなる。十分に適任者を探しきれない理由はこういうところにもある。
また、情報担当のような校内の教師がコーディネートをする場合もある。今回の場合も、山本教諭は担任と専門家を結ぶ役割をしっかり果たしていた。担任とのコミュニケーションもしっかりとれていた。しかし、これも学級担任以外の教師なら誰でもできる、というわけではない。山本教諭のような教師はどこの学校にもいるわけではないのだ。
そう考えてくると、担任であれ情報担当であれ、教師は学習を成立させるためにどのように授業をデザインするか、教師の仕掛けをどうするか、学習環境をどのようにするかを吟味することに集中すべきであろう。できれば、それ以外の人材の調整や大枠の動きのサポートはアウトソーシングするに越したことはない。本実践は、単に子どもたちが「ほんもののパンフを作れてラッキーだった」というプロジェクトではなく、少し大仕掛けの学習プロジェクトにどのような人がかかわり、どのように展開すれば、子どもの学びが見てとれ、授業が成立するのかというノウハウを考えていきたい。
最後まで本実践の行方を見守っていただけると幸いだ。 |