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ホンモノパンフレット制作
このプロジェクトの魅力の一つは、児童が専門家からわかりやすく伝える広告の基礎を直接指導してもらうという点です。広告の基礎なんて、専門外の教師にはわからない分野です。その指導のためにアドビの北川氏およびコーディネーターの中川先生には何度も学校へ来ていただきました。専門家にしかできないサポート、逆に教師にしかできないサポートを見極めながら進めることが、このプロジェクトの鍵となりました。
さてこの授業では中川先生と北川氏が子ども達の前に登場して、パンフレット制作の依頼をされます。「社会・企業を垣間見る」というこのプロジェクトにおいて、児童とクライアントとの出会いの場は大変重要です。前日の打ち合わせで、中川先生は北川氏に企業人として厳しい人を演じるようにお願いされました。パンフレットが一企業の利益を大きく左右する、そしてそれを請け負うことには大きな責任が伴うということを、児童に知らせるのがその意図です。また北川氏には、パンフレットにするPhotoshop Elementsの商品コンセプトとパンフレットターゲット(※2)も説明していただくことになりました。この説明は、実際の広告制作におけるクライアントと広告代理店とのオリエンテーションでも必ず行われます。オリエンテーションは、その後のパンフレット制作方針を決める上で必要不可欠です。クライアントが何を求めているか、またターゲットはだれかを知ることは、情報教育として身につけさせたい相手意識につながります。この日の授業では、そのようなオリエンテーション的な意味合いをこめることもねらいとしました。さらにパンフレット制作の依頼に続いて、パンフレット作りの基礎についての授業もお願いしました。
(※1)クライアント・・・依頼主・顧客
(※2)パンフレットターゲット・・・パンフレット制作側が読み手として設定する対象
9月18日
3分2秒
DSL用
(High)
ISDN用
(Low)
「アドビって会社の人が僕達に話があるらしい…」
どんな話が飛び出すかドキドキ状態の子ども達の前に、金沢大学の中川先生とアドビの北川氏が登場。
中川一史助教授
はじめに中川先生が「君達が作ったみさきの家パンフレット、上手だねぇ」と話しかけられました。みさきの家とは、子ども達が1学期に2泊3日で訪れた三重県にある宿泊施設のことです。実は5年3組の子ども達はみさきの家から帰ってきてから、そのパンフレットをアドビのPhotoshop Elementsを使って作ったのです。
「タイトルや写真がすごくいい!」「何が読み手に響くか、考えて作ってある」など、どれもおほめの言葉に子ども達も上機嫌です。そして「今度はホンモノのパンフレット作ってくれる?」と切り出されました。パンフレットにするソフトは、子ども達もよく知っているPhotoshop Elementsです。中川先生は「今日はアドビって会社の人を連れてきました」と、北川氏を子ども達に紹介されました。
北川久一郎氏
北川氏は最初にアドビ システムズという会社の説明をしてから、子ども達にPhotoshop Elementsのパンフレット制作の依頼をされました。「みさきの家パンフレットを見て、これを作った子ども達ならホンモノパンフレットを作れると思った」という説明でした。
北川氏のパンフレットについての説明
子ども達にとっては自分達の作品を大企業が高く評価してくれたわけですから、うれしくないわけがありません。「パンフレット作ってくれますか?」という北川氏の問いかけに、どの子もニッコニコの笑顔で「ハイ!」と返事をしました。めでたく契約成立(?)のあと、Photoshop Elementsの商品コンセプトの説明をされました。アドビはこのソフトをコミュニケーションツールとして位置づけていること、このソフトを使うと自分の気持ちや考えを人にうまく伝えることができるということをお話しされました。それからパンフレットターゲットは学校の先生であることも付け加えられました。
パンフレット制作依頼に引き続き、北川氏にパンフレットの基礎についての授業をしていただきました。まず最初に、企業の利益を左右するパンフレットの大切さについてお話しされました。さらに、一つの製品のパンフレットを作るのにかかる費用やその内訳、またどれだけの職種の人がかかわるかなど専門的な話もしていただきました。その中で「パンフレットのできが悪いと、私の給料が減らされるかもしれない」というお話は、特にリアリティがあって、子ども達の心には強く印象づけられたようです。後半では実際にアドビのパンフレットを3種類子ども達に配り、それぞれ何のためか、だれを意識して作ってあるかを説明されました。最後には、パンフレット作りで一番大切な事として、「一目で読み手を引き付ける工夫をする」「だれに伝えるかパンフレットターゲットをしぼる」という2点を強調して締めくくられました。
この日の授業を皮切りに、子ども達のホンモノパンフレット作りの長い道のりがスタートしました。
「ほんまに大丈夫?」
中川先生や北川氏の授業の後、担任として開口一番子ども達にこんなことを言ってしまいました。もちろん、子ども達はやる気まんまんで、
「先生、うちら(※1)のこと信用してへんな〜」「大丈夫やって」
とすぐさま楽観的な返事が返ってきました。
「信用していないわけではないけど…」
子ども達がこれからどれだけ大変なことをしようとしているのか、わかっているとは思えない担任でした。
山本教諭から、初めてこのD-proの取り組みについてお話を聞いたときは、正直に言って、とても軽い気持ちで、ちょっとした興味から「引き受けます」と答えていました。どちらかと言えば、機械が苦手で、画面の揺れるTVもたたいて直せば…というおそろしい感覚の持ち主である自分が、少しでも情報教育や情報機器について勉強できればいいなあという程度の思いでした。ところが、実際に企業人である北川氏のお話を聞いてみると、中途半端な取り組みではできそうもありません。先の「みさきの家」パンフレットよりもはるかに制作が難しいであろうことは、先の読めない私にも分かりました。子ども達が最後まで投げ出さずにがんばれるのだろうか、時間と労力に見合う、子ども達の学びのある活動になるのだろうか…。いろいろな思いが脳裏をよぎりました。「とにかく、やるしかない」という前向きな気持ちと、活動の予想が立たない不安の入り混ざった気持ちでのスタートとなりました。
(※1)うちら・・・京都弁で「私たち」という意味。
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