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授業の流れ |
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1.導入
まずは、雪舟作「破墨山水図」を提示します。作者名も作品名も言わずに、「この絵を見て感想を自由に言いなさい。」と指示します。
「なんだか、よく分からない。」といった感想が出ます。そのことが、この授業の出発点となります。「なんだかよく分からない状態」から「すばらしさが分かる状態」にするのが目的です。ワークシートに記入させておくと、授業最後の感想と比較することができます。
しばらく絵を見せて発問を投げかけます。「どんなものが見えますか。」「どんな音が聞こえてきそうですか。」「朝、昼、夕方のどれでしょうか。」などと問うことによって、次第にこの絵に隠されているものが見えるようになります。
ある程度、意見が出たら、次のように説明をします。
「この絵は雪舟という人が描いた『破墨山水図』(はぼくさんすいず)という絵です。雪舟は室町時代の水墨画の画家です。水墨画は水と墨だけを使って描きます。もともと中国から伝わってきたものですが、雪舟はそれを日本独特のものに発展させるのに成功しました。」
最後に「みなさんも、実際に水墨画を描いてみましょう」とよびかけます。
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2.落款づくり(1時間)
落款とは、作者が作品に署名または印を押すことをいいます。作品にすぐに印が押せるように、消しゴムを使って落款をつくっておきます。
消しゴムを正方形に切ります。その大きさに合わせて、自分の名前を書きます。漢字一文字やひらがなのように単純なものがよいです。教師が例を示しておくとよいでしょう。いくつか書いてよいものを選んだら、切り取って、鉛筆で濃く太くしていきます。その紙を消しゴムでつつみこむようにして、上から爪でこすります。すると、下書きの線が消しゴムに転写されます。(落款1)その線に沿って、彫刻刀で彫ればできあがりです。(落款2)
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3.準備と基礎知識(20分程度)
墨の作り方を説明します。まず筆洗に水を入れておき、ほんのちょっぴり墨を入れて「薄墨」をつくります。また、ちょっと多めに墨を入れて「濃い墨」をつくります。デジタルコンテンツで作り方を説明します。
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次に、基本的な表現方法を説明します。
この二つは、デジタルコンテツを提示すると、分かりやすいでしょう。教師がやってみせて、作品例として掲示しておくと、より効果的です。
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4.しあげ(45分)
子どもたちは、習字の時間しか墨汁を使ったことはありませんから、水墨画を描くための筆遣いを指導します。筆は絵の具用の物でかまいません。次の三つの筆遣いを指導していきます。
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○直筆 筆をまっすぐ持って描く(直筆)
習字の筆遣いと同じと考えていいでしょう。
○側筆 筆をねかせて描く(側筆)
水をたっぷり含ませて描きます。
筆の先の方だけに墨をつけると「ぼかし」が表現できます。
○渇筆 水を少なくしてかすらせる(渇筆)
筆の勢いをつけてかすらせるという独特の表現です。
説明の後は、まず自由に試し描きをさせます。そのことによって、作品のイメージがわいてきます。こうした活動が、子どもたちの表現をより豊かにしていきます。
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5.はがき絵づくり(1時間)
「はがき絵」をつくります。すぐにたくさん作ることができます。何も見ないで描くことは難しいので、図書館から図鑑などを借りてくるもいいでしょう。
たくさん描いて、トリミングを行います。はがき大に切り抜いた厚紙を上からあてて、ちょうど良い画面が作れたら、鉛筆で線を引いて切り取ります。最後に印鑑をおしてできあがりです。この作業の流れは、デジタルコンテンツで見られます。
好きな詩や言葉を描き加えることもできます。
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6.最後の鑑賞会
全員が、水墨画を体験したところで、再び「破墨山水図」を鑑賞します。あらためて見ると、墨の濃淡による遠近感や大胆な筆遣いによる線の面白さが実感できるでしょう。
雪舟の他の作品を見ることもできます。「天橋立図」や「秋冬山水図」といった代表的な作品を見せると、より雪舟のすばらしさを実感させることができるでしょう。
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