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D-project アーカイブス 総合的な学習Q&A
第2回  1 2 3
 
現場の疑問に現場の声で答える 総合的な学習Q&A 提供:学研「NEW教育とコンピュータ」編集部
総合的な学習は、教科とちがった単元構成になってくると思います。計画を立てるとき、どのようなことに気を付けたらよいでしょうか。
A1. 山田真代子 教諭「4つのポイントをおさえて単元を構成」
A2. 豊田充崇 教諭「構想段階は綿密に、授業の流れは柔軟に」
A3. 村井万寿夫 指導主事「単元構成はどのような子どもを育てるかの明確化から」
中川先生のここがポイント!「ねらいに沿ってつけたい力に対応した活動を設定したい!!」
4つのポイントをおさえて単元を構成
山田真代子
教諭
 総合的な学習の時間では、子どもの興味関心が継続し、問題解決能力が高まるような学習展開を工夫する必要があります。そのために、以下の点に留意して単元構成をすることが大切です。
1. 子どもの問題意識や意欲を大切にする
2. 問題解決的な学習を重視し、オープンエンドの活動とする
3. 体験的な学習を工夫するが、成功経験のみにとらわれない
4. 活動の見通しを明確にもち、常に「どんな力を育てていきたいか」「活動を広げ深めるためにどんな支援が必要か」等を意識して柔軟な学習展開を工夫する
 本校6年生「とびっきりの町!三ヶ日」では、子どもたちの経験を生かし、地域のよさを見直すと共に、自信をもって地域を紹介することを目標に活動がスタートしました。始めに「東京駅で三ヶ日町を紹介しよう」と投げ掛けました。その結果、子どもたちは、「ミカンについて知らせたいな」「パンフレットを配りたい」など今までの経験を生かして個々の課題を設定しました。その後、地域の方々や専門家を巻き込んだ充実した追求活動が進み、試行錯誤を繰り返しながら深まっていきました。そして、東京駅でパンフレット配布当日には自信をもって三ヶ日町のPRを行いました。その後、全国各地からお礼や励ましの手紙、メールをいただくことで活動への成就感を味わい、そのことが他地域への関心を高め、「もっと住みよい町にするには」という次の活動へと発展していきました。
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A2 構想段階は綿密に、授業の流れは柔軟に
豊田充崇
教諭
 非常に多くの注意点があるとは思いますが、本校で特に気をつけたのは以下の3点です。
 1つ目は、当然、総合的な学習には教科書がありませんから、構想段階でできるだけ多くの教員で意見を出し合い「ウェビング」(構想図の作成)をしました。
 生徒の興味・関心に沿って授業の流れをある程度制御していくことや、方向転換することも時には必要となるでしょう。そのため、授業の流れに多くの選択肢や分岐を持たせておくことや弾力的な実施ができる計画であることなど、綿密な構想を立てておかなくていけません。「まずとにかくやってみよう!」では、行き詰ったときは指導者側が苦しくなるだけです。いくら多忙であっても最初の構想段階での時間を惜しむと、後に大きな損失をこうむることになります。
 次は、学習環境の整備です。生徒が活動をおこなうために必要なスペースや道具、情報機器、教材などを確保し、その数量や利用方法を確認します。必要な道具や機器類に関しては事前に操作習得をしておく必要もあります。また予算面や人材面(ゲストティチャー等)での支援の手はずも忘れてはなりません。
 もう1つは、定期考査や単元テストというものがないために、それに代わる評価をきちんとすることが重要となります。しかし、総合的な学習を教科の成績のように数値で表すことも、指導者側で生徒全員を評価することも困難と言えます。そこで、活動途中では自己評価やグループ内評価をきっちりとおこなうこと、そして単元のまとめや発表段階ではクラス内の生徒同士による相互評価、または学級間・学年間そして学校間交流による外部評価も積極的に取り入れることができるような体制作りが必要です。
 以上のような点に気をつけて単元構成をおこなってきましたが、とにかく、教科書が無いためにどうしても場当たり的になりがちです。ですが、学習目的の達成のために多くの選択肢や様々な視点からの取り組み、時には反復してもいいような学習の流れがあるのが総合的な学習の単元です。そのため、指導者側は考えられるだけの構想を出し、柔軟な授業の流れやアクティブな学習活動に備えておくことが重要であると考えています。
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A3 まず、教師が楽しめる内容を
村井万寿夫
指導主事
 教科の単元構成は、まず、目標の分析と設定から始まります。そして、その目標を達成するための指導計画を組み立てます。一方、総合的な学習では、先ず、どのような子どもを育てるかを明確にし、そのための体験的な活動を組み立てます。そして、その活動にはどんな目標を埋め込むことができるかを考えます。このことに気をつけて単元構成をしないと、教科と総合的な学習の違いが見えなくなってしまいます。
 下図に単元構成の一例を紹介します。
●子どもにつけたい力の明確化
子どもの実体を把握し目指す子ども像を描きます
●テーマの設定
活動のテーマを設定します
●テーマから派生する課題の想定
課題別にグループを作っていくことを想定します
●学習環境の創造
課題を追及するための学習環境を検討します
※課題と学習環境をクロス表で見て取れるようにします

●課題に埋め込まれる目標の設定
課題ごとに期待できそうな目標を設定します
●目標達成を見て取る評価方法の設定
子どもの自己評価法や教師の授業評価法を予想します
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中川先生のここがポイント! ねらいに沿って
つけたい力に対応した
活動を設定したい!!



教科とのアプローチのちがいを明確に

 単元や活動の計画をたてていくアプローチは、教科の場合とは違ったものになります。総合的な学習のねらいにしたがって、各学校で学習活動の中でつけたい力を設定していくわけです。山田教諭の示したように三ケ日西小では、「問題を解決する力」「学び方やものの考え方」「態度」「生き方」をあげているわけです。さらにこれらの「つけたい力」のイメージをもっと抽象から具体に落としていくことが必要です。それを同校の5年生の総合の活動「めざせ!エコ博士(次の質問参照)」では、『三ヶ日町自然探検を通して自分の課題をもち(課題発見力)、自分で活動計画を立て(構想力)、自分なりの方法で調査・体験していく(情報活用能力・行動力)中で、地域の方々や専門家とのふれあいを図り(コミュニケーション力)、調査結果や自分の考えを相手を意識してまとめ(表現力)、発信して』いき、『特に、中学生との交流や町内の小学校とのメール交換では「どんな方法で伝えるとわかりやすいか」を考え表現を工夫する』となるわけです。
 個々の子どもの活動からはさらに具体的な学びの姿が見えてくるはずです。ここにちゃんとつけたい力が埋め込まれているかどうかを活動のプロセスを追う中で吟味していく必要があります。
 村井指導主事が指摘するように、教科にはまず単元の目標があり、それにしたがって指導計画を組み立てます。しかし、総合ではつけたい力(抽象レベル)を明らかにしたところで、体験的・課題解決的な活動(ストーリー)を考えることになります。そのストーリーに、つけたい力(具体レベル)がうまく埋め込まれているかを検討することになるのです。教師がこれまであまり行ってこなかったようなアプローチをするわけです。この経験は、教科学習にとっても効果があると考えています。今までと異なるアプローチを経験することは、教科学習の進め方・とらえ方を改めて見つめる良い機会にもなるのではないかと思います。
 いずれにしても、行き当たりばったりでは活動が「はいまわって」しまうことになります。豊田教諭のとった方法のように、構想段階でできるだけ多くの可能性、柔軟性をもたせる工夫が必要になってくるでしょう。
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