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D-project アーカイブス 総合的な学習Q&A
第3回  1 2 3
 
現場の疑問に現場の声で答える 総合的な学習Q&A 提供:学研「NEW教育とコンピュータ」編集部
Q2 調べる活動のための校内の学習環境作りのポイントは?
A1. 林 誠 教諭「「伝える」ことに重点を置くと効果は全般に」
A2. 向出 章 指導主事「子どもたちの思考過程が途切れないように」
A3. 田中龍三 教諭「目的が曖昧にならぬよう注意を」
中川先生のここがポイント!「よりよい環境に向け常にアンテナを張り巡らす」
「伝える」ことに重点を置くと効果は全般に
林 誠
教諭
 子どもたちの活動に必要な道具や機器がいつでも使えるようになっていること、子どもたちに「調べて」「まとめて」「伝える」技能の指導が計画的になされていること、さらに、そうした活動のための具体的な「手引き」がマニュアル化されていたり掲示されてたりすることなどがあげられます。
 私の教室では、「伝える」ことに重点を置いて学習環境を整えています。効果的に伝えるためには、必然的に、十分に調べ、わかりやすくまとめることが必要になってくると考えるからです。ハード面での中心はプロジェクタです。教卓横に常置してあります。1枚のデジカメ写真をもとに伝える場合も、自分のノートをもとにして発表する場合も、プロジェクタで大きく投影しながら「プレゼンテーション」させるのです。相手を意識しながらプレゼンテーションをすることは、「調べて」「まとめて」「伝える」ための力を高めるために効果的です。また、そのために、「1.伝えたい友だちにアイ・コンタクトをとろう。2.一番後ろの友だちに語りかけるように話そう」というような、プレゼンのための5か条を教室前の一番よく見えるところに掲示しています。
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A2 子どもたちの思考過程が途切れないように
向出 章
指導主事
 総合的な学習の時間などで、情報活用して行く上で、学習環境は最も重視すべきことの一つです。調べる、まとめる、伝えるというそれぞれの活動ごとに学習環境をこれまでの実践をもとに述べます。
 まず、調べる活動においては、子どもたちにその方法を身近に提示しておくと効果的です。図書、インターネットから得る資料、見学、電話、ファックスなど、調べる方法によって、手順や注意点は異なります。これらの方法別にわかりやすく提示した資料を教室内に掲示したり、クリアファイル等に綴じておいたりして、いつでも参考にできるようにしておくと便利です。加えて、学習課題に役立つ資料を見つけた場合には、他の子に伝えることができるお知らせコーナーを設置することも効果的でした。さらに、インターネットによる調べ学習では、それぞれの学習に役立つサイトをリンク集にしておくとよいです。
 まとめる活動では、掲示できるスペースを設置して、そこに参考になる作品を掲示すると、次の活動に役立ちます。また、どこが参考になるかをコメントすることも大切です。
 伝える活動では、収集した資料やレポート等を手軽に表示できるオーバーヘッドカメラやパソコン、プロジェクタ等を教室に配置できるようにしておくと、より効果的です。
 これらの活動は、問題解決をしていく過程を経験することによって培われていくのですが、どのような活動をすればよいかを示しておくのもよいと思います。それらの掲示資料を見ることにより、活動に対するイメージを持つことができるようになります。さらに、テレビ会議用カメラ等は、現在比較的安価であるので、他校との共同学習や交流学習等を、日常的に利用できるスペースを設けてあると便利です。校内ネットワークに各学年の発表用のページがあると、刺激にもなります。
 これまでの実践においていつも大切にしてきたことは、学習活動を先読みし、子どもたちの思考過程が途切れないように支援していくことでした。子どもたちの視点に立って、同じように課題を解決する道筋を追ってみることで、もっといろいろな工夫が生まれてくるでしょう。
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A3 目的が曖昧にならぬよう注意を
田中龍三
教諭
 子どもたちが「調べて」「まとめて」「伝える」活動を一斉に行った場合、学習の目的が曖昧になってしまうことがあります。特に指導者が「伝える」の場面で、発表の場をどのように設定するのか、聴衆との関わり方をどのように設定するのかを考えることが大切だと思います。よくある形はメディアを使って大勢の聴衆の前でプレゼンテーションを行う発表会です。この場合、「伝える」の部分が発表者から聴衆への一方通行になりがちで、「あいつ上手やなぁ」などと、発表の方法やスキルは評価されるのですが、「結局、何がいいたかったんや」「この視点が抜けてるで」など学習の目的や達成の過程について、うやむやのままに終わってしまう場合があります。もちろん、それらのことについて教師から評価は返されますが、子ども同士で評価し合える場を設定し、子どもの評価力も養うことができればと思います。つまり、「伝える」を「伝え合う」にするということです。方法としては、発表会の場に「意見交換タイム」を設けるとか、思い切って少人数のグループ内での発表にしてしまうとか、さまざまな方法が考えられます。このような交流の場を取り入れた場合、自分が調べてまとめた内容が相手に理解してもらえない場面に遭遇し、リアルに自分を振り返る機会が増えます。このようなぶつかり合いが生じる環境を設定し、さまざまなぶつかり合いから学ばせる支援を行うことも大切だと思います。
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中川先生のここがポイント! よりよい環境に向け
常にアンテナを張り巡らす


より調べるはめ、まとめるはめ、伝えるはめになるような学習環境

 コンピュータルームのコンピュータがどのような配置でどのように使えるようになっているかは工夫のしどころです。たとえば、コンピュータルームの真ん中にワークスペースが確保されているだけで、グループの友だちとノートや資料を広げてディスカッションができるのです。  また、コンピュータルームが日ごろどのように使えるかということも大きなポイントでしょう。いつもカギがかかっていたり、限られた時間にしか利用できないのであれば、心理的にコンピュータ(インターネット)が遠くなるのはまちがいありません。  また、図書室を調べ学習などに使うとき、ここにコンピュータがあれば、マルチメディア図鑑で動画を見たり、インターネットで情報を収集することが同時にできるわけです。また、図書室の図鑑の使い方をわかりやすく掲示してあったり、パンフレットなどを置くなどの工夫をしている学校もあります。こうすると、子どもたちが調べ活動などをする場合に図書室の「使える感」が増します。  さて、教室に目を向けてみましょう。教室内でさまざまな掲示をされるのは世の常ですが、問題は何を掲示するか、どのように掲示スペースを使うかでしょう。総合的な学習の活動などでは、それぞれの進捗状況がわかるような工夫が必要になってきます。鷹栖小の林教諭のように、進行表を貼ったり、調べ途中の個人カードを貼るようになっていると、他の子どもとの「絡み」が生まれてくることがあります。

使える「もの」は何でも使う!
 コンピュータを代表とするメディア機器は道具です。どのような学習場面で使いたいかという目的があって道具はその効果を発揮します。しかし、時には「この道具は何に使えるだろうか?」という逆転の発想も大事だと思います。ちょっと文字入力の練習をするとか、お絵かきソフトが何か使えれば良いのであれば、新しいコンピュータじゃなくても十分です。古いコンピュータでも、「何に使えるかな?」という発想にたてば、学習活動の幅を広げるりっぱな戦力となるのです。
 また、教師が自分でコンピュータやインターネットのことにくわしくなくても、学校内外にいるくわしい人をうまく使って(言い方は悪いですが)、子どもたちのすばらしい学習環境に結びつけていることも1つの方法です。
 まわりに誰か助けてくれる人はいないか、使えるモノはないか、いつもアンテナを張り巡らしておくことが、より良い学習環境実現のための重要ポイントだと思います。


 さて、あなたの学校は十分に学習環境が整っていますか? 何がたりないですか? どの部分にさらに重点をかけていきますか?

月刊「NEW教育とコンピュータ」8月号より転載

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