渡辺:大学のようには自由にいきませんが、高大連携といった動きもありますし、学校外とどう繋げていくかといった部分には、コントロールしながら考えていきたいですね。 |
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この『中高は今』シリーズには、特に小学校の先生がたや、子どものお父さまお母さまたちが関心を寄せています。中学・高校を一貫して受け持たれているお立場から、なにかメッセージのようなものはありますか? |
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渡辺:情報教育も含めて、学校生活そのものを楽しんでほしいと思います。そして六年間を過ごし、気がついたら力がついているといったように、一夜にして力が身につくのではなく、積み重ねていくことの大切さを学んでほしいと思います。
ですからこの湘南藤沢中等部・高等部は、慶應義塾の大学に進むための、通過点だと思っていただいては困ります。カリキュラム、設備など充分に用意していますし、たとえば帰国生の方たちで、通常の英語の教科書では退屈だといった場合も、ネイティブスピーカーの教員が充実していますので、退屈させません(笑)。そういう意味では、帰国生の英語力は落ちるどころか逆にもっと上がる。
そういったカリキュラムと、ヒドゥン・カリキュラム〜慶應の伝統や歴史、文化、そして教育の複雑さ、多様さ〜といった教育本来の分厚さを用意しています。教員もみな一所懸命です。
それと、この学校には校則がありません。 |
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校則がないのですか?! |
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渡辺:はい、学校のルールがないのです。つまり生徒たちの自己判断、自己責任を重んじているわけです。これは生徒自身、自分で自分を律することを気づかせる、そういった面への期待からです。これもヒドゥン・カリキュラムの一つです。 |
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校則がないのが校則であるといった風な隠れた装置を用意することで、自然と生徒が自発的、自覚的になっていくというわけですね。 |
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渡辺:そう、だから先生がたの態度、そういったものにも啓発を受けるような。そういった意味で、先生と生徒のコミュニケーション、話し合いが大切になってきます。たとえば相手と話すときには、きちんと相手の眼を見るとか。そういった心がけとしての眼差しも、日々自然と身についてきます。
そうしていくことで子どもたちの社会においても、たとえば六年生は一年生などの小さな子にとって、ああいった先輩になりたいといった身近な良いモデルになれるし、反対に六年生にとっては、部活の中やその他ざまざまな場面で良いリーダーシップをとる経験にもなります。 |
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「情報」の授業の中にも、ヒドゥン・カリキュラムという部分での“気づき”の要素が、随分と用意されているようです。 |
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田邊:子どもたちが、自分の思いを伝えるという道具としてコンピュータを使い、自分の気持ちを相手に伝えることができる。それはコミュニケーションの成立ですよね。そのためにはメールという道具を使ってもいいし、コンピュータアートでもいい、ある時はテレビ会議を使ってもいい。
つまり、どんなときに、どんなコミュニケーションツールを使っていけばいいのかということを、自分で積極的に判断できるようになってほしい。そうなってくれたら、最高です。 |
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情報教育の実践で子どもたちに身につけさせるべき、自分自身で必要な情報を選択するという能力。この能力の向上と、あえて校則を設けず、自己判断させるといった慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部の教育方針は、密接に繋がっているようですね。 |
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渡辺:情報教育とは、これからの国際化、高度情報化社会と向き合っていくための、共生の教育でもあると思っています。そのためには表面だけのカリキュラムではない、ヒドゥン・カリキュラムがますます重要になっていくと思います。 |
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