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Vol.2 新宿区立四谷中学校  1 2 3
 
効果はどうでしたか?
能勢:それでは効果が上がらないという声も確かにあったのですが、結果はそうでもないんですよ。これまでも大会優勝とか準優勝、入賞が多かったんですが、いまだに同じように賞を獲っていますから。
 だからそういった学校の変革も通じて、子どもたちに対しては、「どうやって自分たちが誇りを持てる学校にしていくかということは、君たち自身が決めること」といった語りかたをしていますね。
地域との結びつきという点で言えば、四谷は町としても非常に歴史が古いですね。
能勢:その通りです。しかも四谷という地域は、町会単位が小さいんです。町というよりも、さらに小さなコミュニティで構成されている感じですね。古くから何代も住んでいらっしゃる方もいますし、学校自体も旧校時代から数えると50年以上経っている。
 だからこの地域の人たちは、地元への愛着心が強いし、地元の学校に対する思いもたいへん深い。従って学校への目配りというか、チェックも厳しい(笑)。
(笑)。でもそうすると、こういった都会といいますか、商業が栄えている場所に学校があるということは、実際の社会との関わりを学ぶといった面においては、メリットが多いのでは?
渡辺秀樹先生  
能勢:ですから、総合的な学習の時間でいうと、本校の場合は1年生は「地域」、2年生が「東京」、そして3年生が「日本」というキーワードで行っています。
 1年生は、四谷という地域での体験学習で、30から40箇所くらいの商店や会社、消防署や警察などにお願いをして、そういう所に数人ずつ社会体験をしに行っています。その場合、体験先には、できるだけ子どもたちに説明や講習はしないで欲しいと頼んでいて、とにかく一緒に働かせてあげて欲しいと要請しています。
 この学習方法は、統合前の四谷一中時代から続いていまして、かれこれ6年くらい。総合学習が始まる前から実践してきたことなんです。
子どもたちはそこでどのような体験をして、どういった成果を得られるのですか?
能勢:体験学習に際しては、まず“職業”からスタートして、事前に何ヶ月間かインターネットなどを利用しながら調べさせます。そしていろいろな職業を、子どもたちが分担して調査し、職種を知る。
 次に、自分はどの職業を体験してみたいかを選ばせます。さらにその希望する職種の相手先に連絡させるわけです。だいたい50〜60くらいは希望職業が上がりますね。その一つ一つに体験学習の受け入れを依頼してみます。
 そして受け入れ可能になった職業を、教師の側で一度簡単にシートにまとめ、それを子どもたちに提示して再度、職業を選ばせます。希望が多くてダブった場合は、抽選になりますが。
そこからいよいよ、実際の仕事の体験と…。
能勢:いやその前に、もう一段階。最初の調査は職業の種類を調べただけですので、それよりもっと詳しい調査が必要です。
 たとえば“お菓子屋さん”を選んだグループなら、“お菓子屋さん”とは、どんな仕事なのか。図書館に行って本を調べたり、インターネットなどを使って調べます。
お菓子屋さんの場合、最終的にはお店に行って、実際にお菓子を売ってみるわけですね。
能勢:そうです。
消防署などの場合は、何を?
能勢:消防署の場合には、基本的には救急救命の初級講習を受けるんですね、一日半くらいかけて。そして、資格を取るわけです。最後には修了証書がもらえます。
中学一年生で、救急救命の初級資格が取得できるということですか?!
能勢:もちろんそうです。
素晴らしい!
能勢:そういった資格を取らせてもらって、なおかつ実際の消防服を着せてもらって消防車に乗ってみたり、梯子車を体験したり、放水の練習をさせてもらったり、そういったことを実際に体験させています。
 こういった感じで総合的な学習は「地域」から「東京」、「日本」へと学年を追うごとに広がっていきます。またこの学習の進め方には、生徒全体で行うものと個人で行うもの、2つの流れがあります。
 どういうことかと言うと、我々教師の側にも総合的な学習を通じて、子どもたちに学ばせたいということがあるわけです。そういったテーマは、生徒全体で学んでもらう。
 たとえば昨年、『プロジェクトX』に出ていた伝説の消防士を学校に招いて、消防車も学校に呼び、その方のお話を聞いたり、放水実験をやってもらったりしました。この場合、企画を立てたのは教師側ですが、その実施に当たっては子どもたちが実行委員会を作り、そこで3年生が先方との交渉も、実際にその方に何度も話を聞きに行ったり、メールをやりとりしながら詰めていきました。
 反対に個人的なテーマ、たとえば1年生の時に消防署で体験学習をして、人命救助に興味を持った子がいたとします。で、2年生になってもこのテーマを続けたいと。そういった場合は個別のテーマとして継続して行えるよう、ある程度柔軟に対応しています。
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