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Vol.2 新宿区立四谷中学校  1 2 3
 
3年生のテーマは、なぜ世界ではなく、日本なのですか?
能勢:国際化とよく言われますが、実際は大人の我々ですら、国際化とはどんなことなのか、あまりよくわかっていないのではないでしょうか。いっぽうその国際化の中で、この日本のことをどこまできちんと説明できるのかというと、それもできない人が多い。
 国際化とはまず自分を知ること。だから自分の国で、伝統的な文化はこういったものなんだよとか、たとえば相撲についてはこういった歴史があって…という風に、少しは説明ができる。そういったものを持ってて初めて、世界に出るべきだと思うんですね。
 英語ができれば国際化だとは思わないし、むしろ外に広がるときには、自分自身の国や社会のことをもっと学ぶべきだと思いますね。
話は替わりますが、こちらの学校では「著作権」についての学習もかなり進んでいると聞いています。社会での体験学習といった面から考えますと、子どもたちにとっては、著作権というテーマも、社会と自分の繋がりを知る良い機会になりますね。
能勢:「著作権を知る」ということは、「著作権法を理解する」ということではないと思っています。それに我々は、法律家を育てているわけでもありません。
 法律をどう解釈するのかといったことではなく、基本的に人が作ったものを真似してはいけないだろうし、自分が描いた絵を人に真似されても嫌だろうといった当たり前のことを、道徳の時間が子どもたちに必要なように、著作権についても授業を設けて再認識させたいということなんです。子どもたちの知識というのはバラバラですし、それをまとめて上げる必要もありますし。
つまり著作権ということを通じて、倫理観を育てたいということですね。
能勢:人のものを持ってきてはいけないという考えは、これまで、ただ何となく漠然とした感覚としてありましたよね。そして物を真似しちゃいけない、でも人が見てなかったらいいじゃないか、といった風潮も。
 でもそういった部分に関して法律もあるし、そもそも集団で生きる時にはルールがあるよね、ということなんです。それにインターネットなどの普及によって、ホームページを作り、また画像なども利用して貼ったりと、我々一般の人間も現在、作る立場と利用される立場の両方を体験しています。
 ということは、これまでの時代なら、著作権の侵害ということにほとんど関わりがなかった一般の人間も、これからは加害者にも被害者にも両方なる可能性がある。
その時に自分は権利を持っているし、逆に誰かから権利を行使されることもあるということを、子どもたちには今からきちんと教えておかないといけないと思うのです。
 実際の話、著作権の許諾申請を取るのは大変な話が多い。それを苦労して許可してもらうということは、つまり著作権を持っている相手も、苦労して物を作ったということ。著作権という話から、そういった物を作ることの大変さや、相手への敬意も学んでいって欲しいと思っています。
中学生くらいの年齢ですと、音楽が大好きな年頃でもありますね。著作権といった話題からいくと、この音楽という物にも当然、著作権があるわけですが。
能勢:そうですね。音楽を聴くために、子どもたちがCDを買いますよね。すると彼らは、「CDを買った」と思っているのです。媒体を買ったという認識ですね。
だから、そうじゃないんだよ、あなただけ何回でも聴いていい権利を買ったんだよ、と教えています。すると、あ、そうかと。こういった身近な話題は比較的、理解しやすいみたいです。
いずれにしましても体験学習や著作権の学習は、子どもたちが社会というものをリアルに実感し、自分たちがどんな場所に生きているのかを知り、考えるための良いモチベーションになっているということですね。
能勢:本校で行っている職業体験を通じた学習には、物づくりといった面も含まれています。
 物を作っていくというのは総合的な能力ですし、知識だけでなく、実際の体験を通して技術に触れたり、その技術を自分も使ってみることで、身につけていくことができるわけですから。
 いわゆる情報、それだけでは世界は成り立っていませんし、情報の基本にある物や考え方をしっかり教えていきたいと思っています。
校舎
〈新宿区立四谷中学校〉 http://academic1.plala.or.jp/jyotsuya/
平成13年4月1日、旧四谷第一中学校と旧四谷第二中学校が統合され、誕生。現在統合2年目を迎え、保護者や地域の人たちも生徒とともに、四谷地区の新たな中学校を応援すべく、さまざまな活動に協力している。校舎は迎賓館のそばに位置し、公園や緑にも恵まれた環境。学校では生徒一人ひとりの特性や能力に応じた課題をたて、将来の社会自立に向けて、家庭や専門機関とも連携を図りながら指導を進めている。
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