スタンリー・キューブリック監督作品の「2001年宇宙の旅」(原作 アーサー・C・クラーク)は、水飲み場に集まった類人猿が他の集団と争っているときに初めて骨を武器として使い相手を打ち負かすシーンから始まる映画でした。400万年の時の流れは道具と人間を進化させ、映画に描かれた2001年はHAL9000というコンピュータが宇宙船を操縦しあらゆる判断を下し、トラブルも解決してくれています。人工知能を持ったコンピュータは人間以上の知能を持ち、やがて人間の都合によって停止されることを拒み人間に戦いを挑むというシーンは美しい映像とともに大変印象的でした。
このようにコンピュータやロボットが人間に戦いを挑むという世界を描く小説や映画を一度は観たことがあるでしょう。コンピュータが人工知能を持ち、ロボットが人間の代わりに仕事をしてくれる世界は誰もが想像できた21世紀なのかもしれません。ところがインターネットを中心とした通信技術の発達は想像を超える勢いで進化しています。私たちが今体験しているIT革命と呼んでいるものが10年後、20年後にしてみれば、大改革のほんのさわりだったといわれるかもしれないのです。それほどこの先の技術開発と社会の変化を予想することは難しいのです。その難しい時代を生き、その先にある未来を作るのは子供たちであり、若者たちです。
私たちは子供たちに何を伝え、何を残していくべきか、それを大きく左右するのは学校教育といえます。文部省の掲げる教育改革では、ゆとりを持った生活や学習計画、自己解決能力の育成つまりは生きる力を身につけさせることを目指しています。基礎学力を「読み・書き・計算力」と定義したとすると、これらを身につけさせるためには、何度も繰り返し教え込んだり練習させることは重要なことです。いわゆる理屈抜きで教え込む部分です。しかし、それ以上のことを同じように教え込んだとしても自らの学習意欲がなければ簡単に身につくものではありません。いつまでも「やらされる」勉強から「やる」勉強に脱皮できないでいるのです。子供たちに学習に対する興味を持たせ、自ら学習を進める力を身につけさせることこそがこれから起きるであろう社会の変化に的確に対応できる人材を育成することになるのです。
世界各国においてコンピュータを使った情報教育の推進は目覚ましいものがあります。ここ数年では欧米各国よりもインド、韓国、シンガポールといったアジア諸国は小学校の段階から情報教育と英語の必修を目指し教育改革を迅速に進めています。これはひとえにこれからの国際社会に対応できる人材の育成にあります。自然環境、食料、エネルギー、人口、民族紛争、、、これらの問題は、開発と発展の代償として21世紀の子供たちに残した負の遺産といえるかもしれません。これらの問題の解決を21世紀の子供たちに託す以上、これからどう生きていくべきかその方向性を示唆しそのために必要な教育を受ける環境を整備していくことは大人の責任なのです。
次回の第7回目を担当されるのは、和歌山大学教育学部附属小学校の貴志年秀先生です。貴志先生とは数年前から学校交流プロジェクトのメディアキッズでいっしょに活動してきました。FLASHやDirectorといったマルチメディアソフトを使って環境問題をテーマとした教材や生徒作品の制作を実践されている先生です。
では、貴志先生よろしくお願いします。
2002年7月24日 |