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キーワードで読む情報教育 10
教えあい
〜子どもたち主催の「パソコン教室」は、どんな教育的意味があるのか?〜
レポート1
ミニ先生は、クラスを育てる!
上谷典秀
(三重県 名張市立 百合が丘小学校)
私が担当したクラスには、必ず「ミニ先生」という役割があります。先生のミニチュア版、つまり、子どもたちがお互いに教えあう時に「先生」になるのです。ミニ先生はどの子がなるかなんて決まっていません。ある時は○○ちゃんがミニ先生で教えたり、また別の時には、ミニ先生になっていた○○ちゃんが教えてもらったり。どの教科でもいろんな場面でいろんな子どもたちがミニ先生になって教えるのです。その時によくわかっている子が、困っている子、求めている子に教えにいきます。パソコンなどの情報機器を使う時も一緒です。

パソコンの授業といえば、先生が、「このようにやりましょう」そして、「次はこうですよ」といった一斉にやらせて操作を覚えさせていくことがまだまだ多いのですが、そういったことはほとんどしません。今年担当した6年生は、修学旅行での想い出や学習したことを「はっぴょう名人」というソフトでまとめて授業参観会でプレゼンテーションしようという学習に取り組みました。もちろん子どもたちはそのソフトを初めて使うのです。「今日は新しいソフトで作るで!」「え!?どんなの?」「とっても簡単にできるからいろいろ試しながらやってみてね」これだけで子どもたちはその新奇性にわくわくどきどきです。子どもたちはそれぞれに教えられたアイコンをダブルクリックして起動していきます。「えー?ここにタイトルつけるんかなあ」「そのボタンやで、書いてあるやんか」「ちがうで!」「文字はどうやって入れるの?」いろんな声が飛び交います。ここで先生が登場してはもったいない。子どもたちのわくわくどきどき感がぶっとんでしまいます。

じっと子どもたちの様子を見ています。「わかった!これや、ここをクリックしたら画像を選べるし、貼りつけられる」私は、「おお!画像の貼りつけ方を見つけてるで、○○ちゃん、ミニ先生になってや!他の子も発見したらどんどんミニ先生になっていってね」「それは先生知らんなあ、○○ちゃんに聞いてみたら?」私の役目は、どの子がわかってきていてどの子が困っているかを見つけてその子どもたちをつないでいくことです。子どもたちは自分から席を移して教えにいきます。教えている子は得意気にこうしたらと教えます。こうしているうちに驚くほど短時間で基本的なところを使えるようになります。

教えあい、作品を作っていく時にもう一つポイントがあります。作成途中に中間発表会をするということです。半分くらい作ったところで発表し、お互いに批評しあうのです。すると、プレゼンテーションの内容もうんと良くなるし、音を使ったり画面の切り替えを効果的にしたりするグループなども出てきて、またまた「それってどうやったん?教えて!」となります。こういった教えたり、教えられたりといったことが自然に行われるようになるためには、パソコンを使っているときだけではできません。日常の授業の中で「みんな得意なところや苦手なところがある、みんなで教えあってみんなでかしこくなろう」といった雰囲気や場面をいかに作っているかということでしょうね。

3年生の時、教えあうということが一人の子をうんと変えてしまったということもありました。「A君、これどうやるの?教えて!」みんなからひっぱりだこになったA君は、実は1年生の頃よりみんなから恐がられている存在でした。3年生当初もそういった雰囲気だったのですが、ある時より変わってきます。お母さんがやっているパソコンをよく見て触っていたA君は、教室にやってきた1台のパソコンをみんなで遊んでいるうちにみんなから頼られる存在になってきたのです。頼られるようになってからA君の日頃の言動までどんどん優しくなってきます。教え方も上手になってくるし、みんなもA君に対する見方を変えていきました。操作を教えるというのが目的ではないのです。教えあうという活動の中から友達がどういう思いでいるのか、友達とぶつかったときに自分はどうすればいいのか、といったことを学んでいくこのプロセスが大事なのです。これまで気づかなかった友達の新しい面を発見したりコミュニケーションの力を伸ばしていったりと、教えあう活動の中には様々な学びがあるのではないでしょうか。
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