人に取材をして調べる場合に最も大切なのは、「誰」にあたって調べるかということです。調べたい課題の「核心」を教えてもらえる人に取材ができたことにより、調べ学習自体が深まり、さらにその後の学習に広がりが出た例を紹介します。
5年生の総合的な学習で、米作り活動を中心とした食と環境についての学習を行いました。水田地帯の真ん中にある学校とはいえ、家で稲作の手伝いをした経験がある子はほとんどいません。田植えまでに必要な作業、苗の植え方、肥料のこと…分からないことばかりです。農家の子は家で聞いてくるのですが、農作業の主力はおじいちゃん、おばあちゃんで、各家それぞれ独自のやり方もあり、今ひとつ確信をもって「こうだよ!」と教室でみんなに伝授できるほどの情報を仕入れることができません。思いあまって何人かの子が近くの農協に質問に行きました。たまたまそこで出会ったのが、地区を担当している営農指導員のお兄さん。子どもたちの質問に熱心に答えてくださり、そのまま学校の田んぼを見に来てくださいました。そして、「よかったら学校で教えてあげるよ。」ということになったのです。休日の出来事だったので、次の日、学校へ来るなり子どもたちは事の次第を報告してくれました。これはお願いしない手はありません。早速連絡を取り、日程を調整してゲスト・ティーチャーとして迎えました。今まで抱えていた米作りに関する問題が一度に全部解決しました。さらに、田植えの日には苗の植え方を指導してもらい、子どもたちと一緒に植える手伝いまでしていただきました。その後も、仕事の合間に様子を見に来ては、肥料や除草剤についてアドバイスをするなど、子どもたちとの交流が続きました。米作りの作業に関しては、営農指導員さんはまさに「核心」だったわけです。 |
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田んぼでの田植えの様子 |
教室でお話をしてもらっていることころ |
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青々と育つ稲を見ながら、社会科で減反や米の輸入などについて考えているときです。「どうしてわざわざ外国の米を輸入するのか分からない」、「外国米はうまいのか」ということが話題になり、外国の米について調べてみたいという願いが強くなりました。しかし、インターネットで検索してみても、せいぜい長粒種と短粒種があるとか、黒米がどうのとかいうことしか分かりません。そんなとき、新聞に県内のある小学校が外国米と国産米の食べ比べをしたという記事が載りました。それが食糧事務所の協力を得て行われたことを知った子どもたちは、食糧事務所がどこにあるのか調べ、近くにもあることを突き止めたのです。近くといっても校区外ですから歩いて訪ねることはできません。そこで、2人の子が電話で質問をしたところ、「外国米の米粒のサンプルを見せてあげましょう。」と学校を訪れてくださいました。そして、食べ比べ会もしてもらえることになったのです。もちろん、子どもたちは大喜び。当日の様子も新聞社の取材を受けて紙面を飾ることになりました。その後も食糧事務所の方との交流は続き、質問を送ると、ていねいに調べた上で、資料を作って返してくださいました。また、ピラフやドリアは本当に外国米で作った方がおいしいかどうか実際に作って調べたいというと、必要な量の米を届けてくださったりもしました。
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交流会「もちっこまつり」の様子 |
子どもたちはお世話になったことがうれしかったのでしょう。3学期には、収穫したもち米を使って料理を作り、営農指導員さん、食糧事務所の職員の方を招いて感謝の会を開くことになりました。お客さんの予定を聞いて計画を立て、招待状を送り、会場や会食の準備をし、接待したり、一緒にゲームをしたり…一連の活動もまた、自分たちでイベントを創り上げる大切な経験になりました。
自分たちの疑問を解決するための質問からはじまったつながりが、一時的なものに終わらず、最後の交流会にまで広がったのは、やはり、相手が「核心」だったからだと思います。そして、そこに子どもたちが自分たちの力で迫ることができたからです。「調べる」ことの醍醐味の一端が表れてはいないでしょうか。 |