平成15年度から全国の高等学校で新たに始まる教科「情報」については、初めてということに起因するさまざまな問題があります。これを、一言で片づけてしまうとすれば、「誰が何を教えるねん?」という問いになろうかと思われます。そして、高校の現場で現在(平成13年度末)のところ、残念ながらまだこの答えを明確に持ってはいません。何をやろうかと侃々諤々の議論中の学校もあれば、今のところ全く見通し無く何のビジョンもできていないところもあるようです。本稿ではこの現状を少しお伝えしようと思います。
まず、「誰が教えるか」という部分については、新しい教科「情報」の免許を持っている教師ということになりそうです。この免許を取るには、いくつかの方法があります。一つ目は、主に夏期休業中に現職の教員を対象に行われる免許講習会を受講する方法です。ここで、即席で情報科の教員を量産しています。しかし、現職の教員で数学や理科など限られた教科の先生のみがこれを受けることができるというモノなので、ここで免許をもらえるのは、もともと何か別の科目だった先生ということになります。ぶっちゃけて言えば、世に出すために鍍金をしているような状態なのです。二つ目は、認定試験を受ける方法です。年に一度、いくつかの種類の教員免許が、いわゆる一発試験で交付されています。情報科にもこの試験があります。自動車教習所に通わずに、運転免許を試験所の実技試験で取るようなイメージです。そして、もう一つは一般的な教員免許で最もポピュラーな、大学で一定の内容を履修して交付してもらう方法です。何年か後にはこの方法が一般的になってくることも考えられますが、何せ新しい教科ということで、平成15年度のスタートに大学の授業で免許を取った教師が教壇に立つのは、大リーグでレギュラーポジションをとるくらいの確率になるかも知れません。また、たとえ担当したとしても、これは研修医にいきなり困難なバイパス手術を執刀させるようなものかもしれません。あと例外的には当座の措置ということで、臨時免許(簡単に言えば校長が一時的に教える教師を指名するようなもの)で担当者になる場合もあるかも知れません。
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より大きな問題は「何を教えるか」ということです。もちろん指導要領はあります。しかし、具体的にどんな内容をどんなスタイルで指導するかは未知数です。たとえば、実習で何をさせるかということをとってみても、試行的に行われている取り組みも様々です。座学だけで知識を詰め込んで、定期テストだけで評価するというスタイルは少なくとも通用しそうにないので、コンピュータを使って実習させてその成果物などを評価してみようと、私も試みています。一例を挙げれば、架空のコンピュータのスペックを一覧にしたものをプリントにして配り、これをもとに、そのコンピュータを新製品として売り込むためのチラシを作成させるという実践があります。提出された作品には、とにかくデータを表にしただけのものもありますが、四苦八苦していろいろな発想で作成されたものも多く出てきます。実在するコンピュータのスペックと比較したモノ。自分で勝手にコンピュータの予想図を書いてしまったモノ。感情にうったえるような凝ったキャッチコピーを創ったモノ。バラエティに富んだ作品ができあがりました。生徒に情報活用能力を身につけさせる方向性としては、この線だと思うのですが、ではこの作品をどう評価して、生徒が身につけたスキルをどう測定するかというのが、次の課題ということになりそうです。これが自分なりに具現化できれば、新しい科目の担当になったとしても、何とかやっていけるのではないかと思っています。ただし、私が免許を取得できればの話ですが… |