デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
先生の道具箱 ホンモノパンフレット制作
 
授業報告【第2回】
パンフレット研究をする
授業のねらい

キャッチコピーとは、読み手の目と心を一目でつかむ、短い宣伝文のことです。別名キャッチフレーズともいいます。新聞、雑誌、ポスターやテレビCMなど、その気になればいたるところで見つけることができます。このキャッチコピーは、パンフレットなどの広告物には不可欠です。でもこれについては、現行の小学校国語の教科書には出てきません。そこでこの授業では、まず初めにキャッチコピーの基礎学習をした上で、実際にPhotoshop Elementsのキャッチコピーを作ることにしました。

一般的にキャッチコピーは短いものが多いです。一瞬で読み手を引き付ける必要があるからです。人が一瞬で理解できる文字数は、10文字前後と言われています。この短い文章の中に、読み手を引き付けるしかけをしなければいけません。コピーが長くなった場合は、思い切って削ぎ落とす作業が必要です。句読点一つ入れる入れないで、読み手に与える印象ががらっと変わってしまうこともあります。このようなキャッチコピー作りを通して、国語の文章センスを磨くことをねらいとしました。

またキャッチコピーを作って発信することは、間接的に読み手とコミュニケーションすることになります。作り手は、そのコピーによって読み手の心がどう動くかを、よく考えて作らなければいけません。それにパンフレットターゲットの年齢や性別によっても、キャッチする手法は変える必要があります。つまりここでは、相手意識を育てることもねらいにしています。

広告業界でキャッチコピーを作る人を、コピーライターと呼びます。コピーは数が勝負!ということがよく言われます。でも何百というコピーを書いても、そのうちキラッと光るものはごくわずか。全部ボツなんてこともめずらしくないそうです。その一方、人気コピーライターともなると、1本のコピー報酬は何百万円にもなります。さらにヒットコピーによってその製品が売れれば、何億円というお金を動かすことにもなります。このようにたった10文字程度のコトバの持つ威力を感じさせるのも、国語科の学習としては意味があると考えました。
授業の様子

キャッチコピー研究の授業にむけて、子ども達に日頃から雑誌やテレビCMからキャッチコピーを集めさせることを、山田教諭に依頼しました。「テレビCMをたくさん見る事」という前代未聞の宿題に、子ども達は意欲的に(!)取り組みました。そしてむかえたキャッチコピー研究の授業では、集めたコピーの比較をしました。
すると、キャッチコピーには、次のようなタイプがあることがわかりました。

 
1. だじゃれ・パロディ型
  2. 数字で訴え型
  3. 五感に訴え型
  4. 色でイメージ型
  5. 擬音語活用型
  6. 共感型
  7. 擬人化型
  8. 呼びかけ型   など
 
それからどのキャッチコピーも、短くまとめられていることがわかりました。この点について山田教諭は、「キャッチコピーは、一瞬で人を引き付ける必要があるので短くするんだよ!」と子ども達に説明しました。
 
 
模造紙に書きためられたキャッチコピー  

この学習のあと、Photoshop Elementsのキャッチコピーを作っていきました。ただキャッチコピーは、広告対象をしっかりと分析してからでないと、作ることはできません。それに前述の通り、キャッチコピーは数が勝負です。そこで、すぐに作るのではなく、2ヶ月という期間を設けて、その間にたくさんキャッチコピーを作っていくことにしました。そのため、山田教諭は教室うしろの壁に模造紙をはりました。子ども達は、そこに思いついたキャッチコピーを書きためていきました。子ども達はアドビの北川氏からPhotoshop Elementsの商品コンセプト=コミュニケーションツールという話を聞いていたので、「伝える」というキーワードが入ったコピーが多く見られました。

※1 電子掲示板

模造紙以外のアイデア共有手段として、インターネット上にキャッチコピー案書き込み用の電子掲示板(※1)を立ち上げました。こうすることにより、中川先生やアドビの北川氏にその進捗状況がわかります。子ども達には家でアイデアを思いついた時にも、すぐに書き込んでみんなに知らせるように指導しました。
これらの方法によって、Photoshop Elementsのキャッチコピー案は、最終的に200以上集まりました。

中でも、最も意欲的に取り組んだのは、あかねちゃんです。校内で児童会の本部役員をつとめるほどがんばり屋さんの彼女は、一人で30ものコピー案を考えました。そのほとんどは、「頭の中でパッと豆電球が光ったように」ひらめいたそうです。

〜あかねちゃんのキャッチコピー案より〜

・まっすぐ思いを伝えよう!
・わたしのキモチあなたまで
・『自分の想い』はカタチにしなきゃ
・自分の世界を広げよう!
・エレメンツで新しい世界を。
・コミュニケーション楽しもう。
・『オリジナル』を目指すあなたへ。
・『みんなといっしょ』じゃつまらない。
・自分の想い、アピールしよう!
・『伝える楽しさ』実感しよう
・『意外な才能』発見か?!
・今のでアナタは満足ですか?
・新しいコト始めよう   
・・・・・
 
コピー案を考えるあかねちゃん
最終的にキャッチコピーは、パンフレット表紙に一つだけのせることになりました。どれだけがんばってたくさんコピーを書いても、採用されるのはたった一つというわけです。このあたりの厳しさを体験することも、広告の制作現場を垣間見るよい機会となりました。
 
(※1) 電子掲示板・・・一人から不特定多数への連絡や情報提供に使われるWebページ。インターネットにおけるコミュニケーション機能の一つ。
担任のつぶやき
  子ども達は1学期の「みさきの家」パンフレット作りで一度キャッチコピー作りを経験しているので、その特徴はある程度分かっています。例えば、体言止めが多い、感嘆符(!)がよく使われている、問いかけ(?)で終わるものが多い、いいと思わせるような言葉が使われている、などです。けれども、いざ作るとなると、どのようにして作ればいいのかわからない子どもも多かっただけに、今回のコピー作りでも、核となる言葉を明確にしておかなければならないと思いました。そこで、Photoshop Elementsというソフトが、いったい何のために作られたソフトなのかということを一緒に考えました。すると、子ども達からは、

・ パソコンでいろいろな物が作れる。
・ 絵、写真や文字をおもしろくしたり、修整したりできる。
・ 簡単に、速く作れる。

といった意見が出てきました。最終的には、「伝える」、「コミュニケーション」、「楽しさ」、「手軽さ」といった言葉を核にコピーを作っていこうということになりました。
 なかなか言葉が思い浮かばない子どもには、「大切ということを表したいときは、〜のようにという方法もあるよ」「一つの言葉から連想して、違う言葉をつかってみればどう?」・・・といった助言をしていきました。また模造紙に自由に書き込む方法は、子ども同士で刺激しあうことができたり、長い活動でも常に意識をさせておくことができたりと、大変有効でした。
 
第2回へ 第4回へ
先生の道具箱 ホンモノパンフレット制作