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D-project アーカイブス 情報教育座談会
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※この座談会記事は日本教育新聞に掲載されたものです
集合写真2002年度から本格的に実施される新教育課程により、学校現場には大きな変革の波が予測されている。とりわけ情報教育については、国家プロジェクトのなかでもその推進が重要課題として挙げられ、「総合的な学習の時間」や2003年度から開始する高等学校の普通教科「情報」を含め、どのような形でデザインしていくかは大きなテーマと言っても過言ではない。このシリーズは、21世紀の学校教育に必要不可欠となる学校・地域・企業の連携をその中心軸として、これからの情報教育において必要になる素養や子どもたちに起きるさまざまな変化、情報教育の未来像について、現場の教師はもちろん、企業のスペシャリストなどを交えながらその答えや実践例をあらゆる角度から探求していくものである。第1回目のテーマは、古来から以心伝心を美徳としてきた日本人が最も苦手としている「プレゼンテーション能力」について。
プレゼンテーション能力を育てない日本
中川:2002年度から小・中学校では「総合的な学習の時間」が、高校では2003年度から新教科「情報」がスタートします。そのねらいは多々ありますが、「学び方を学ぶ」点は大きいと思います。簡単に言うと「調べて、まとめて、伝える力を付ける」。特にプレゼンテーション能力を付けることは大きな柱になるはずです。では始めに、小学校の現状からお話しください。

佐藤:日本は風土的に「言が立つ」ことに否定的な風潮があると思います。子どもたちも表に出ることが恥ずかしいようで、以前、五年生が調べ学習で初めて発表する際、黒板に向かって話すので驚きました。自分に自信がないんですね。

田邊:その点、私どもの学校は帰国子女が大変多く、授業で「このことについて知っている人?意見のある人は?」と投げかけると、次々に手を挙げて発言します。また、日本の子は同じ発言が出るとすぐに手を下ろしてしまいますが、欧米で教育を受けた子は「○○さんの意見に近いけれどこう思う」「僕も同じ意見です」と表明する。しかし、半年も経つと誰も手を挙げず、こちらが呼び掛けないと発言が聞けなくなってしまいます。
 どうも日本の教師は、子どものプレゼンテーション能力を引き出す力が不足しているのではないかと心配になります。

中川:村岡さんは企業で管理職の立場ですが社会人のプレゼンテーション能力はいかがですか?
中川一史氏 「『失敗を学ぶ』ことが教師にできるかが心配」「各教科の根幹を育てる『情報科』での学び」
中川一史氏
村岡:私の部署では、企業やユーザーに対して「私はこう考えています。あなたはどう思いますか?」とプレゼンテーションする機会が多いのですが、なかなか上手にできません。まずプレゼンテーションのための資料が作れないのです。おそらく、自分の思いを他者に分かるようにまとめて伝えるという経験を学生時代に積んでないのではないでしょうか。

中川:私の大学でも学生に意見を求めても誰も何も言いません。ところが、当てるとしゃべり出す。私は必ず授業の感想を書いてもらうことにしているんですが、そうするとたくさん書いてきます。だったら最初から発言してほしい(笑)。
 学生に聞くと自分で何かを発表したりまとめたり、グループでの作業をほとんどやってこなかったそうです。だから今、授業のなかに演習形式のものを取り入れているんですけど、機会を与えると一回目より二回目の方が確実にうまくなる。

佐藤:子どもたちも発表の機会を多くしたら、徐々に人に向かって話せるようになりました。
 黒板にべったりはりついていた五年生も、「修学旅行に向けての発表会」では、伝えたいことに応じて方法を選択し、自信を持ってプレゼンテーションを行うことができるようになったんです。例えば「自然や命を大切に」という学習をして、そこで調べたことを大人に伝え、大口の町に自然を増やしたいという思いを持った子どもたちは、新聞を作りそれを配布しながらプレゼンテーションを体験しました。またテレビ会議で緊張感のあるコミュニケーションも身に付けたのではないかと思います。
田邊:どう説明すれば相手にきちんと伝わって頭のなかで再現してもらえるか。それには、料理が一番いい課題かもしれません。実際に本校では料理を作るプロセスを写真に取ったり、レシピをまとめたりして、結び付ける活動をしています。「おばあちゃんから教えてもらった味」「我が家の自慢料理」などが出てきておもしろいですよ。工夫して自分の伝えたいことが相手に伝わったときはすごく嬉しい。
 そのためには、きちんと資料を揃え、説得力のあるプレゼンテーションに仕上げていかなければいけません。そのときに写真を入れるなど、工夫できるのがコンピュータの利点だと思います。

中川:なるほど、自慢料理のプレゼンテーションにコンピュータを活用するわけですね。
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