中川:その一方、中・高では教科の壁という現実があります。横のつながりをどのように実現されているか、お聞きしたいのですが。
田邊:教科の横のつながりを実現したいという願望は強いんですが、実際には、中学・高校教科担任制です。自分たちの授業のなかで発表行為に意義を感じていれば工夫をしていけますが、知識の正確さを求めるとなるとプレゼンテーション能力は置いていかれがちですね。それを補うため情報の時間では「こんなときにこんなプレゼンテーションをすると効果的な発表ができる」と子どもたちに教える。実感した子どもたちは、英語の時間に使ってみたり、理科の実験結果を発表するときに使う。あるいは、社会科の統計の時間でやったグラフ形式でまとめてみようと発展していくはずです。
中川:新しくできる情報科は、コミュニケーションの根幹になるような部分をしっかり育てようとする大きな意義がありますね。各教科のベースになる部分を扱う情報科は、他教科への波及効果も大きいと思いますが。
田邊:理想的な考え方でいけば情報科はなくなっていいんですよ。情報科学を学習するなら別ですが、本来はすべての教科の基本に組み込まれるべきもので、ツールとしてコンピュータを使っていこう、情報を共有していこうということを大切にするためのスキルや概念は、どの教科にも共通して求められると思います。
例えば、うちの高校では模擬国連というイベントを英語科でやっています。生徒たちがチームに分かれて各国の代表に扮し、あるテーマのもと、自分の国は賛成か反対なのか。その考えをプレゼンテーションするという場面でも、どうすれば一番いいやり方なのかを真剣に考えています。
中川:子どもたちが学んだことをさまざまな形で活用している好例。
佐藤:六年生で自分の伝えたい方法を選んで、説得する力を育てるには一年生からの積み重ねが欠かせません。
うちの学校でも盛んに校内研修をしているのですが、田邊先生がおっしゃるように情報教育はあくまでベースであり、それを取り上げて勉強しましょうというのはなく、子どもの活動に情報のエキスを入れていけたらと研究しています。 |