村岡:ソフトを提供する側から言えば、先生にも子どもにも使えるという観点で作ると、結果的にどちらにも合ってないものになってしまうことがあるんです。
例えば「一太郎スマイル」というソフトのワープロ機能は、実は子どもたちにはそれほど需要がありません。では、なぜ企画したかと言えば、このソフトの開発当時、先生方がほとんどパソコンを使っていなかったんですよ。掃除の時間以外、コンピュータ・ルームの鍵が開かないという学校がいくらでもありました。
とはいえ、我々が「使え、使え」と叫んでも、効果はありません。そこでまず先生に使ってもらおうと、「一太郎スマイル」には先生が使ったら便利な機能をたくさん盛り込みました。先生の公務処理用に便利なものがたくさんあれば、日常的に使用していただけると思ったからです。
逆に「はっぴょう名人」では、先生方の使い勝手は一切考慮しなかったんです。だから子どもたちに使われているのかもしれませんが。
佐藤:「先生はパソコンを使えないといけない」ということは決してないと思います。コンピュータだって、子どもたちの方が簡単に覚えて使い込んでいくし。
中川:ええ、私も先日、石川県の学校で情報教育の発表をしたのですが、コーディネーターの先生は非常に情報教育に堪能なんですが、他の先生は「果たしてどうかな?」と一抹の不安がありました(笑)。その学校では一年生の担任の先生が、家族紹介にデジカメを使ったところ、子どもの一人が「デジカメ貸して。僕も撮ってくるから」と言ったそうです。
また、その学校では四年生が「はっぴょう名人」をいろいろおもしろいことに使っていたけれど、先生は全然使えない。先生は何をしているかというと、周辺のことをサポートしているだけで、中身は分からないんだそうです。「分からなくても両者がうまく共存していけば、いいツールになるんだな」と思いながら見させてもらいました。 |