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シリーズ2 プレゼンテーション能力の豊かな教師が子どもたちを伸ばす  1 2 3 4
 
環境を整え、現場をバックアップするシステムに
中川:そうなるとプレゼンにメディア機器を使ってもらうなどというのはなお難しいのですね。

佐和:30歳以上の教師は、自分が子どもの頃、デジタル・ツールを使ったプレゼンを見た経験がないんですよ。話術の上手な先生はいましたが、コンピュータを使った視覚や聴覚に訴えるものではない。自分が教師になり、分かるように伝えないといけないとは思っていてもコンピュータの使用には二の足を踏んでいる。しかし、何とか、デジタルなものが子どもたちに与える効果的な面を認識してもらうことが大事だと思います。

中川:足りないことを校内の先生に気付かせるための全校的な規模での仕掛けはありますか?

佐和:私は研究主任をしているので、年度始めの研究計画についてには自分でプレゼンを行いました。「今年の研究主題はこれにしたい」という共通の話題もあります。 同じ学年の教師などが組んで、校外学習で日光に行く場合の保護者説明会で、「寒いのでたくさん洋服を持ってきて下さい」と文章で書くよりも「これが視察に行ったときの画像です」と見せれば「なるほど」と皆が納得します。校外学習でも、事前に出掛けて撮ったものを「この信号は短いですから横断注意」というようにプレゼンすれば、百聞は一見に如かずで、分かりやすいですよ。

中川一史氏 「『失敗を学ぶ』ことが教師にできるかが心配」「各教科の根幹を育てる『情報科』での学び」
佐和伸明氏  

中川:「隣のクラスはよくデジカメを使っているけど、うちの先生はやらないわ」となれば保護者が騒ぎ出すかもしれない。「では学校全体として取り組もう」と発展するかもしれません(笑)。
 さて、身をもって示す、親に示す、仲間を作るといったケース・スタディが出ましたが、中学校ではどうでしょう?

豊田:中学校では教科の壁が高いので、専門性や「なわばり」に囚われず、全員が前向きに総合に関わることが大事だと思います。

中川:「総合的な学習」の授業設計をしていくことで、教師のプレゼン力に目を向けることがあるとすれば、総合の意義も深くなりますね。

豊田:それから、プレゼンが上手な子の実践を見せるのも大きなポイントです。中学生ぐらいになると、原稿を見ないでプレゼンする子が25人に1人くらいはいるんですよ。「よく頑張ったね」と言うと、他の子も「自分もやってみよう」となるはずですから。

佐和:子どもに力を付けさせるのは、教師にとっても良い考えだと思います。子ども自身から「プレゼンでやりたい」という方向に持っていかせる手段は、効果がありますよ(笑)。

上草:ある学校の例ですが、20人学級で子どもたちが車座で座っていました。「マルチメディアボード」を使うときになったら、先生が子どもを出してきて「小学2年生ですが、この子は先生よりもコンピュータに詳しいから」と言ったのです。 そんなふうに先生が受け入れ、子どもを持ち上げるシーンを作ってあげると伸びていくし、周りの子どもたちも「自分もそうなりたい」となるのではないでしょうか。

「『失敗を学ぶ』ことが教師にできるかが心配」「各教科の根幹を育てる『情報科』での学び」 中川一史氏
  上草憲昭氏

中川:教師が子どもと共に学ぶという姿勢が大事なわけですね。

佐和:別な手立てとして、できる人とTTを組む方法もありますね。プレゼンの効果を認識しても、コンピュータが苦手という教師は少なくありません。プレゼンを作るとなったら、機械を扱えるだけでなく、そこで子どもにどう力を付けさせればいいのか、どこを評価すればいいかの視点を持っていなければならない。その両方がなければ良いプレゼンは作れません。コンピュータを使う際にそういうタッグを組む体制を作っていくことは教育効果を高めると思います。

豊田:本校の場合は周辺環境の影響が大きいんです。生徒の家庭でのパソコン所有率が85%もあり、中学1年生からタッチタイピングする子もいます。職員は全員がコンピュータを所有しているし、個人で研修したり自宅で研修できる環境やすぐに授業実践ができる環境も整っています。

佐和:ええ、環境は非常に大きな要素を占めていますね。本校では十数年前から情報教育に取り組んでおり、全普通教室にもコンピュータが設置されています。また、校内LANが整備されているので、校内のどこにいても子どもたちは必要なデータをいつでも見ることができます。また学習室を設けて、テレビ会議とプレゼンは電源を入れればできるようになっていますし。

中川:なるほど。まず環境を整えることが子どもにとってもそうですが、教師にとってもプレゼン力が付くことに欠かせないということですね。
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