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シリーズ2 プレゼンテーション能力の豊かな教師が子どもたちを伸ばす  1 2 3 4
 
相手のリアクションを意識したプレゼンが必要
中川:効果的なプレゼンのためには、子どもたちがリアクションを返せる状況をいかに設定できるかが大きな鍵を握っていますね。その点についていかがでしょうか。

佐和:技能を身に付けることを中心に作らせると、それで満足してしまうので、作ったものを発表する場を確保しないといけないですね。ですから、個人的に作ったものでも皆の前で発表する場を作ります。
 今の上草さんの話で耳が痛いんですが、「わからないはずがない」という教師に育てられた子どもは「言えばいいんだ」という発表に終わってしまいがちです。「伝えたいことが相手に伝わっているかを知りたい」と考える子を育てないといけないのですが……。

  和歌山県美里町立美里中学校
豊田:中学生の場合は、小学生より皆の前で発表するのを嫌がるんです。でも少人数ならスムーズにできるので、まず、5〜6人のグループ内でプレゼンして、そのなかの4人に評価してもらう。それを改善し、クラスで発表します。さらによくできたものを上にのぼらせるというように三段階を踏んでいます。また、発表の際は各グループに指導者が一人つきます。そのための時間と機材や指導者の確保が大変ですが、これはプレゼン講座だからできるのでしょう。

佐和:「総合的な学習の時間」でグループや個人で発表するとき、発表の手段を選択する形が多くなってきていますね。ただし、皆がプレゼンソフトを使うかというとそうでもありません。グループで冊子にまとめたり、紙芝居、ビデオを見せるなどのいろいろな手段があります。いろいろなメディアを選択させたときには、各メディアを使ったことについて「新聞だからじっくり読めた」「プレゼンの音が効果的」「紙芝居の絵はかわいいけど小さい」など伝わり方についても考えさせるようにしています。
 選択できるのはいいけれど、子どもたちはきちんと基準を持って選択しているのか。メディアの特性を考えて選択させるようにしていかないといけません。

中川:グループで人数を区切る、時間を区切るというように、区切ることで力を付ける手立てを講じていることがわかりました。
正しいプレゼンの仕方を教える研修が不可欠
中川:さて、子どもたちのプレゼン力も大事ですが、先生にその力が付いていて、自分にそれが実践できるかといえば難しいような気がしますね。

上草:ええ、研究発表の授業などで、目線が子どもより評価する人たちを見てしまうことがあります。ある学校がテレビ会議で遠隔授業を行ったとき、教師に都合のいいことを言う子ばかりを当ててしまうんです。本当に主張したい子は言いたかったことが認めてもらえなかったために、2度目は発言しなくなるかもしれない。先生が一生懸命なのはわかりますが、「誰のために何をするのか」という方法論を間違えるケースが出てくる可能性があります。
 プレゼンもコミュニケーションの一つで、最終的に「コミュニケーション力を育てるためのプレゼン力」ということを再確認しなくてはいけない。もっと子どもの目線に立った方法論を検討すべきだと思います。

豊田:研究発表会では「担当が2人いて、発表原稿を読む人とボタンを押す人。紙で配った方が早いような内容を読み上げて終わり」というシーンが多すぎます。
 先日、私が原稿を読まないでプレゼンをしたら「原稿を読まない発表を初めて聞いた」と驚かれました。それが現状です。プレゼンソフトの研修はたくさんありますが、作った後の効果的な発表方法まで踏み込んだ研修が必要なんです。

「『失敗を学ぶ』ことが教師にできるかが心配」「各教科の根幹を育てる『情報科』での学び」 中川一史氏
  豊田充祟氏

中川:相手のリアクションをきちんと意識した発表の経験が少ないというわけですね。政治家も原稿を読まないで演説すれば話題になるくらいだから、実状は押して知るべきだと(笑)。
 子どもたちに発表の仕方を説きながら、自分は研究発表で棒読みになってしまうのは、どうしてでしょうか?

豊田:発表原稿がないと落ち着かないという点が1つ。失敗できないということも大きいですね。失敗することを恐れる先生は多いんです。

中川:きっちり読むとなると読み飛ばすことができないので、顔を上げることができなくなる。すると、聞き手のリアクションが見られない。

佐和:教師自身も研究発表で自信のない発表をしているんじゃないかと思います。「うちの学校はこういう実践をしたらこうだった」と訴えて心にとめてもらい、他校の先生方に「では、うちの学校でもやってみよう」という気にさせてしまうことが目標ですが、そこまで達成できていない場合は、自信を持って意見を述べられない。
 「やってみて失敗もしたが、すばらしい効果もあった。だから他でも試してほしい」というスタンスが欠けていますね。 教師が授業を行うのは子どもに何かを残したい、伝えたい、変えたいという気持ちがあるからで、それがプレゼンのような気がします。

中川:そうなると研究主任などが入って、発表会をどうするか検討できるか否かがポイントかな。多くの観衆でドキドキして失敗したくないと思えば、ポスターセッション形式にすればいいわけで、どうして全国の学校はそうならないんですか。

豊田:今までのスタイルから抜け切れていないというのが現状ですね。研究発表会でも「前例がない」と何回も言われましたから。

中川:評価がうまく返ってくる仕掛けになっていないということですね。
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