中川:外部の人を多く招くことによって、子どもたちに何か変化が現れてきましたか?
山本:物作りをテクニックも含めて教えてもらうのですが、その際、子どもたちはどんどんインタビューするし、説明も受けます。外部の人に接し、その人の話に耳を傾けることができるというわけです。以前は質問がなかなかできなかった子どもが、疑問を抱いたら積極的に質問するなどの変化がありました。
中川:国際理解を推進している金沢市のある小学校では、ALTを入れて、ゲームなどに取り組んでいます。何年か経て最も子どもが変わったところは自然に「ハーイ!」とアメリカ風に(笑)挨拶できるようになったことで、英語を覚えるためではなく、人間同士の関わり方を学んでいたと聞きました。他者とふれあう場面を生活のなかに意図的に仕込んでいくと、長期的な視野で見れば、コミュニケーション能力が培われていくように感じました。北川さんは保護者のひとりとして、子どものコミュニケーション能力を養うための授業の事例や要望はありますか。
北川:私は外部の人間として学校をよく訪問しますが、子どもたちは他人とふれあうことで刺激を受けますし、慣れた者同士の教室で「あ・うん」の呼吸で伝えられない相手と話をすることは、有意義だと思います。ある意味、「話す・聞く」ことで失敗する経験をしてもいいのではないでしょうか。いくつか失敗を経験した後に、相手に自分の話がうまく伝わったら、喜びもひとしおだと思います。そのためにも、外部の人間を学校に招くという取り組みは、積極的にやっていただきたい。子ども自身も知恵を身に付けるには自分の考えを誰かに話してみることが最も有益です。ちょっと聞きかじったことでも人に話して議論すると、さまざまな考え方を知り、知恵がプラスされ、その積み重ねが次回に話すときに応用されていく。コミュニケーションがうまい人は何かしらの技を持っているように感じます。学校ではそういう授業はないんですか。
中川:これは難しいですね(笑)。「本物と関わる緊迫感、異質なものを受け入れる」ことがキーワードになってきた気がします。コミュニケーションの成就感を得るための、失敗の経験を、どの程度のさじ加減で、どうやるかが問題ですね。
江守:確かに失敗を組み込むことは難しいですね。コミュニケーションの場面はつくれても、子どもにとっての失敗か成功かは自分では分からないわけですから。 |