山本:これまで「聞く・話す」力は、地域教育や家庭教育で自然に育つものという考えが社会全体にあったように思います。ですから学校現場でも取り立ててコミュニケーション能力の育成を研究する学校はあまり見られませんでした。学校では「読む・書く」力を重点的に指導するべきだという考えが無意識にあったんでしょうね。でもこれからは、やはり「聞く・話す」力も学校で意図的に指導していく必要があると思います。
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山本直樹氏 |
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江守:5年前から、世界の高校生とディスカッションしようと「環境サミット」に取り組んでいますが、日本の高校生は考えを持っているのに話せない。外国の生徒は積極的に質問し、発言する。また、向こうの先生たちは稚拙な質問でも決して切り捨てず、応答していたのが印象的でした。
中川:私も江守先生のおっしゃるように、研修先のサンフランシスコでミドルクラスの子どもが実に初歩的な質問を次々と行い、先生が逐一答えていく場面に出くわしました。日本では先生がすでに学んだ初歩の質問ですと、たしなめて抑えたりしますね。一方では、言いたいことだけ発言して人の発言を聞けない子どもが増えているように感じます。企業人として、北川さんはいかがですか?
北川:仲間うちでグループを作って、異質なものを排除する傾向がでてきていると感じます。こうなると、近寄りがたい雰囲気になってしまって、コミュニケーションが成立しなくなる。普通は他者の多様性を認めたうえで、まず話をしてみて、その先の互いの関係を探っていくのが社会人としてのマナーだと思いますが、異質なものは排除して寄り付かせないという感覚や態度は気になります。学校生活でもあるかもしれませんが、自分の意にそぐわない他人の意見は、最初から否定して話を最後まで聞かないんですね。せめて発言の全体を聞いてみて、建設的な議論に持ち込めばいいのですが、根本的な態度がないと思います。
江守:私は「情報メディア」の授業を担当しています。内容はコミュニケーション能力についてで、まずディスカッションの方法、つまりコミュニケーションのルールを教え、どんな発言でも聞いてもらえる雰囲気作りをして、生徒たちにディスカッションの場を提供します。 |