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第1回 テーマ(課題)設定について教えて!!  1 2 3
 
現場の疑問に現場の声で答える 総合的な学習Q&A 提供:学研「NEW教育とコンピュータ」編集部
テーマを見つけ、課題を設定する方法を教えて!

1年間、総合的な学習の時間を試行してみたのですが、設定したテーマが悪かったのか(町の歴史を調べました)、子どもたちの食いつきが悪く教師が無理矢理活動させているような授業になってしまいました。 新年度からはテーマを変更しようと思っています。 テーマ設定で失敗しないためには、どのようにテーマを見つけていけばいいのでしょうか。また、それをどのようにして、子どもたち一人ひとりの課題へと落としていけば良いのでしょうか。

(東京都、小学校5年生担任、Aさん)

A1. 田中恵子教頭「テーマ設定時に考えておくべきこと」
A2. 細川都司恵教諭「全活動を支える土台作りの2つのポイント」
A3. 佐藤幸江教諭「まず、教師が楽しめる内容を」
中川先生のここがポイント!「どのようにテーマを見つけていけば良いか」
テーマ設定時に考えておくべきこと
田中恵子
教頭
 この、『テーマ』については、いろいろな次元で語られると思われますが、ここでは、次のように共通理解しておきたいと思います。
 ここでいう『テーマ』とは、環境・福祉・・・といった類のものを意味していません。児童が自分たちの目的や完成のイメージを具体的に抱ける『〜を作ろう』といったものです。
 そのテーマの見つけ方として、2つのスタンスがあると考えています。
(1)児童から、作ってみたいもののいくつかを出させていく
(2)教師が児童の実態を見たうえで、こんなことなら興味を抱いてくれるだろうなあと思えるテーマを探す
(1)、(2)とも、その中に
・どのような学びがあるかを見取る(学びの価値)
・ハードルがどのくらいあるのかを考えておく(連続した課題)といったことが必要になります。
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A2 全活動を支える土台作りの2つのポイント
細川都司恵
教諭
 集団としての児童の特性、および、児童がこれまでにどんな学びを経て育ってきているのかを、まず第一に踏まえること、テーマを決めるために十分に思いをめぐらすことのできる時間を与えることが、全活動を支える土台づくりになると考えます。
 3年生では、「清湖小ふれ愛ランド〜人・しぜん・生きものとふれあって仲間になろう〜」に取り組みました。生活科で、地域の自然の移り変わりや人々との関わりを存分に楽しんできた児童の学びをベースに、学校・地域をよりよくするため実践的・協働的に関わることのできる児童へと成長させたいと願う教師の思いを融合させ、新たな学びの姿を目指しました。
 オリエンテーションで、地域の願いのもと作られた清湖小のこと、生活科でお世話になった地域の素敵なゲストティーチャーのこと、地域と実践的に関わっている他校の総合的な学習の様子などを紹介することによって、児童は「自分たちの力でもっとみんなが喜んで来たくなるような学校をつくろう」という思いを強くしていきました。
 その願いをもとに、「ゆめの学校づくり」を議論する子どもたち。本物に近づける粘り強い努力と命を扱う責任を自覚させながら、実現可能なこと・自分たちが本当にやりたいことは何かと教師が問いかけていくことで、目的意識と活動内容が具体化していきました。ここでつかんだ目的意識は、常に児童が自らの活動を評価する視点となりました。
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A3 まず、教師が楽しめる内容を
佐藤幸江
教諭
 今、「総合的な学習の時間」がまさに全国で実施されようとしています。しかし、全面実施を前に、どのように実施していけばよいのか悩む声が教育現場のあちらこちらから聞こえてきます。
 それは無理もないことで、今まで私たち教師は、目標も内容も方法もしっかりと決められた中(教科書&指導書)で、そのコースからはみ出さない指導を展開してきました。すっかりそれが身についてしまった私たちですから、「子どもたちに学び方を身につける学習」をコーディネートしていくのはとても大変なように感じてしまいます。でも、それでは子どもたちは熱中して追究活動に取り組み、その楽しさや充実感を味わうことはできないのではと思います。
 そこで、私は「子どもたちと先生とが共に楽しめる活動」を提案したいと思います。
(1)研究分野・得意なことを増やそう!
 本校で初めて「総合的な学習の時間」について研究を始めた年に、テーマ(単元)開発に枠を設けずに取り組んでみました。つまり、「先生がやってみたいことに取り組む」という手法をとってみたのです。その結果、日頃から自然に親しんでいる先生は「生産的な活動を基にしたテーマ(単元)」を、自分の研究分野が社会科の先生は「教科を基にした単元(テーマ)」を、そして私はちょうど情報教育に関心を持ち始めた時期でしたので「今日的な課題を基にした単元(テーマ)」を開発していきました。つまり、先生が関心のあるテーマであれば、子どもたちの活動がどちらの方法に向こうと教師は余裕をもって許容していけるのです。
 教師が「ぜひやってみたい!」というテーマの引き出しをたくさん持ちましょう。
(2)人のネットワークを広げよう!
 とはいえ、一人の人間がそんなにたくさんの引き出しを持つことはなかなか難しいものです。そこで、自分の力に余るテーマについては、その道の専門家の方にご登場いただくことに限ります。そういう人のつながりを広げていくことは、自分自身の刺激にもなります。
 たくさんの人とつながりましょう。
(3)学年やブロックの先生方と子どもたちについて話をしよう!
 このようにして、テーマの引き出しをたくさん持っていると、子どもたちの実態に応じたテーマ(単元)候補の開発ができます。次にこれらの候補の中から、どのような問題解決活動を通していかなる「内容」を身につけることができるのか検討していくわけです。でも、そのときに一人善がりの学習計画になってしまうことは避けなくてはなりません。そういうときに、日頃子どもたちのことを学年やブロックの先生方と話していて子どもたちの実態をよく知っていてもらうと、「ここではこんな課題が出てきて、次にこんな活動がもちあがるのでは…」などといったアドバイスがたくさんもらえます。それが、組織的に行えればベストなのですが。
 テーマから課題におとすときには、たくさんの目で検討を加えましょう。
 いかがでしょう。「いかにして…」などと教師が構えずに、子どもたちと共に追究活動を楽しめる「総合的な学習の時間」に取り組んでいきましょう!
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中川先生のここがポイント! どのようにテーマを
見つけていけば良いか



子ども・教師の実態に合っているか

 いくら「4年生は環境」と決まっていても、子どもたちの興味関心やそれまでの経験によって検討し直す必要も出てくる。何の疑いもなく、「学校で決まっているから」と形だけなぞれば、表面的なものに陥ってしまう。また、教師の構成にも配慮したい。個々の教師の得意分野もあるはずだ。子どもの思いに寄り添うのはもちろん正論だが、教師の特色も加味しながら、パワーが最大に引き出せる落とし所を年度初めにじっくり話し合ってほしい。

うまくいきそうか
 テーマ候補が決まったら、細川教諭が指摘するように「児童が必要に迫られ、自らの力で乗り越えていかざるを得ない壁」を活動の節目に設定できるか、「それを乗り越えるとどんな力がつくか」を想定する必要がある。これが明確でないと「はいまわる活動」になってしまう。教師がどこでどう「しかける」のか、田中教頭の言う「課題が生まれてくるような活動を仕込む」というのも「はいまわらないため」の重要なポイントだろう。ただし、しかけがうまくいかない時に深追いは禁物だ。子どもたちの動きとかい離したものになりかねない。
 また、節目や課題がうまく生まれてくるような活動につながる人やモノなどの要素が揃っているかも検討したい。総合は教師1人では決してうまくいかない。こういう人やモノがどのように「回るのか」ということが重要なポイントになる。

発展が可能か?
活動の広がりを想定するやり方はいろいろある。例えば、学年の教師でウェビングをやってみると良い。キーワードでどんどん広がりをイメージしていく。これをやると、どんな活動の広がりになるのかある程度想定できる。小学生でも高学年なら子どもたちとともにトライすることも可能だ。
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