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第1回 テーマ(課題)設定について教えて!!  1 2 3
 
現場の疑問に現場の声で答える 総合的な学習Q&A 提供:学研「NEW教育とコンピュータ」編集部
Q2 課題を見つけ、深めるための支援はどうすれば良いの?

一応「これで行けそう」というテーマを決めることができました。でも、子どもたちが各々の課題を見つけるという場面になると、どうしても課題を見つけられない子が出てきます。また、課題は決まっても、そこから内容をどんどん掘り下げて行くことができず、時間をもてあましてしまう子も多いのが現状です。このような子たちへの支援をどのように行ったら良いのでしょうか?

(兵庫県、小学校6年生担任、Bさん)

A1. 田中恵子教頭「課題が自然に見えてくるテーマを」
A2. 細川都司恵教諭「壁を乗り越えた後につく力をイメージさせよう」
A3. 佐藤幸江教諭「課題をみつける力は多様な教科で鍛える」
中川先生のここがポイント!「テーマ設定は総合成功の鍵、じっくり時間をかけたい」
課題が自然に見えてくるテーマを
田中恵子
教頭
 この問いは、前問と関係が深いと思われます。つまり、『テーマ』に関しての吟味がとても大切になってきます。
 テーマに沿って、教師はどんな活動を考えているのかを明確にする必要があります。
 総合的な学習を始めていく初期段階では、課題が生まれてくるような活動を仕組んでいくほうがよいと思います。課題を見つけるということ自体、かなり高度な取り組みだからです。
 もの作り活動に取り組む場合、子どものねらいをより具体化し、イメージ化させておくことが大切です。もの作り活動に入れば、まず調べなければならない場面に出くわします。そんなもの作り活動をテーマとして持ってくるとよいと思います。
 “もの作り活動には、どうしても抵抗がある。研究的活動をテーマに持っていきたい”という場合、その調べたい意識が、子どもたちにとって本物かどうかが一番問題です。また、Q1で述べたように、ハードルがどのくらいあり、そのハードルが児童のレベルにとってどうなのかを予想しておかなければなりません。
 いずれにせよ、子ども自身の目的意識が第1だと思います。
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A2 壁を乗り越えた後につく力をイメージさせよう
細川都司恵
教諭
 児童が必要に迫られ、自らの力で乗り越えていかざるを得ない壁を活動の節目に設定し、不安を共感的に受け止めながらも、それを乗り越えるとどんな力がつくかということをイメージさせていくということだと考えます。ふれ愛ランドを作るにあたって、まず、場所や方法・道具、費用・材料に関する許可・調達のため、児童が学校内外の方々に自分たちでお願いに回らなければならない状況をつくりました。自分たちのやりたいことが一つひとつ実現していく喜びと、協力してくださった人々への感謝の気持ちは、休み時間もいとわず活動に汗を流す児童の姿となりました。また、相談会議を開きながら問題点を出し合い全体のものとすることで、共同体としてどう活動していけばいいか日々選択できました。
 全校にふれ愛ランドを紹介する活動にあたって、不安で尻込みする雰囲気の中、話し合いを深め「やりとげたら○○な力がつくよ」と自分たちの成長の姿をイメージし、新たな活動エネルギーを生み出した場面は感動的ですらありました。振り返りノートにもペンを丁寧に入れ、児童の「気づき」や「活動の値打ち」を評価し、一人ひとりの児童が認められる場や役割をつくることも大切です。教師はとかく、意欲のない児童の姿を気にしがちですが、それもその児童の特性と肯定的に受け止め、よさに目を向け、必要以上に追い込まないことが共に総合を楽しく取り組むコツかなと思います。
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A3 課題をみつける力は多様な教科で鍛える
佐藤幸江
教諭
 これは、教師が追究しなければならない永遠のテーマのひとつではないかと思います。そして、「総合的な学習の時間」だけで『課題を見つける力』は育てられるものではないと思っています。私の場合は、各教科、特に社会や理科の時間で鍛えています。そこで、鍛えられた力が「総合的な学習の時間」にも発揮されるのではないでしょうか。
 その方法とは……
1)課題を教師が出して、方法も同一に
2)課題を教師が出して、方法は児童に
3)いくつかの課題を教師が出して、その中から児童に選択させ、方法も児童に
4)課題も方法も児童に
さらに、グループで解決する場合と個人で解決する場合というように、様々な学習形態をとります。そして、いつも自分で課題を見つけられなかった子どもが、「どうしてだろう」とか「知りたい」とかという思いをもったとき、すかさず大いに誉めることにしています。遠回りのように感じますが、着実に子どもたちは力をつけていきます。
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中川先生のここがポイント! テーマ設定は総合成功の鍵、
じっくり時間をかけたい



テーマや課題の与え方にレベルあり

 佐藤教諭と田中教頭が指摘しているが、テーマの与え方、課題の出会わせ方には次の4段階のレベルがある。
・教師が与える
・教師が候補をなげかける
・子どもと考える
・子どもにまかせる
教師が与える場合も、子どもに「与えられた」と思わせず、どう切実感を持たせるのか、そのテーマに前問の回答で示したような見通しを持てるのかの検討が必要なのは言うまでもない。
 与え方のレベルは、年度初めか、年度の終わりかでも違うし、どの学年なのかにもよるし、子どもの実態にもよるだろう。佐藤教諭の言う追究の方法についても同様だ。

うまくいきそうか
 テーマ候補が決まったら、細川教諭が指摘するように「児童が必要に迫られ、自らの力で乗り越えていかざるを得ない壁」を活動の節目に設定できるか、「それを乗り越えるとどんな力がつくか」を想定する必要がある。これが明確でないと「はいまわる活動」になってしまう。教師がどこでどう「しかける」のか、田中教頭の言う「課題が生まれてくるような活動を仕込む」というのも「はいまわらないため」の重要なポイントだろう。ただし、しかけがうまくいかない時に深追いは禁物だ。子どもたちの動きとかい離したものになりかねない。
 また、節目や課題がうまく生まれてくるような活動につながる人やモノなどの要素が揃っているかも検討したい。総合は教師1人では決してうまくいかない。こういう人やモノがどのように「回るのか」ということが重要なポイントになる。

成功の鍵は課題をつかむ部分にあり
 テーマが適当かどうかとともに、どのように子どたちが課題をつかむのかも、成否を決する鍵となる。多くの場合、課題をつかむ時間もほどほどに、調べ活動などに移ってしまう。つかむ時間を十分に保証する必要があると思う実践が少なくない。また、あまりにも課題が壮大であったり、抽象的であったりして、課題として成立していないことも多い。子どもたち一人ひとりが課題を十分に追究していけるような「ゆさぶり」や「絞り込み」をどこまでできるか、がポイントになる。

月刊「NEW教育とコンピュータ」4月号より転載

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