2 安易に受け入れられているコンピュータ
まったく逆のパターンもある。先日、ある学校に行くと、校長が「うちでは先生方はコンピュータで絵をかかせている」のでりっぱな図工の授業になる、という。これではコンピュータをただ使っているから総合の中で情報をやっている、と言っているのとまったく同じだ。「コンピュータで」絵を描いた(というかちょっとマウスを使ってみた)ことを特別なこととして位置づけている管理職がまだまだ少なくないのは事実だ。総合でもちょっとカードを作るグループがあれば、それで図工の時間に組み込まれてしまう。
ここでは、図画工作科で子どもたちにどんな力を培いたいのかとか、子どもたち主体の創造的な造形活動はどのようになっているのかといった見直しが、全くなされていない。コンピュータを使う、使わないに限らず、そこが大事なところではないのか?
コンピュータにはコンピュータの特性がある。
後で出てくる佐藤教諭は「コンピュータの他の表現材料や用具にはないよさ」として、5つあげている。
- やり直しや修正が簡単にできるので、失敗を恐れずに表現することを楽しめる。
- 試行錯誤ができるので、試みながら発想や構想を深めたり、操作のテクニックを拾得したりでき、意欲が持続する。
- 画像、音声、動画など複合した表現が、比較的簡単にできる。
- ファイルに保存することにより、やりたいと思ったときにいつでもとりかかることができる。準備も後片付けも簡単である。
- ネットワークを活用することにより、情報を共有したり発信したりして、コミュニケーションすることができる。
子どもたち全員がコンピュータに同じ興味をもち、同じスキルを身につけるとは限らないであろう。さらに小学校では1人1台の環境にもなかなかすぐにはならない。しかし、そこでスキル面などを補いつつかかわり合いながら活用していくような場面は、まさにOne of themのコンピュータなのだ。「使う子もいれば使わない子もいる」「作品作りの一部はコンピュータで行う」ということをベースにした題材も先に述べた教科書でも登場している。教室にもコンピュータが入ってくるという文部科学省の施策から言っても、これからこのような授業が普段の姿になっていくのではないだろうか?
これらのよさを生かして、子どもたちが意欲的に創造活動に取り組める題材がもっともっとたくさん出てくることを期待したい。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授 |