〜ネチケットを語る前に…情報モラル:学校はインターネットの有害情報にどう対処していくのか〜
学校でのインターネット環境の整備はこのところ急速に進んでいる。情報化が進む社会の要請でもあり、文部科学省の施策の一環でもある。
しかし、このような活用の増大にともない、各学校や教育委員会ではいわゆる有害情報への対処が叫ばれるようになってきている。インターネット上で公開されているWebページは子どもたちにとって、有益なものばかりではないし、何かあるとその責任は管理責任部署(責任者=学校の管理職、教育委員会)に及んでくるからだ。
さて、ここでは、ネット上のエチケット(=ネチケット)のさまざまな取り組みは実践レポートに譲って、少し、その他の情報モラル=有害情報への対処について考えてみたい。
子どもにとっての有害情報と言っても、どこまでを限定するのか難しいが、たとえば、暴力やポルノなど「身体的精神的健康」に関するもの、犯罪や詐欺等の「犯罪的行為」に関するもの、人種差別や中傷など「人権」に関するもの、薬物製造やカルト信仰など「反社会性」に関するもの、などが考えられる。事件に引き込まれるケースもありえないとは言えないし、心が傷つくこともあるかもしれないのが事実である。アメリカでは子どもがインターネットで犯罪にまきこまれることが少なくないために、子ども部屋ではなく、親がいる居間でアクセスさせるように促している州もあるようだ。
システムとしての遮断〜フィルタリング〜
有害情報の有力な対処方法として多くの地域の教育委員会が採用しているのが、フィルタリング機能の利用だ。フィルタリングは、情報内容について設定したレベルだけの情報を自動的に選別する機能のことをいう。
閲覧制限については、推奨リストのみを閲覧できるようにする「ホワイトリスト方式」や有害なリストを遮断する「ブラックリスト方式」がある。「ホワイトリスト方式」は選定したものだけを子どもたちが閲覧することになるので、非常に安全性は高いが、授業で利用しようとしたときに、学習にとって重要なサイトが選択されていなければ閲覧できないことになってしまう。これに対し、「ブラックリスト方式」は、最新の情報を得られる良さはあるが、どんどん新しいサイトが登場するインターネットの世界では遮断すべきリストの更新が間に合わない状況も生まれている。現在では、「ブラックリスト方式」が主流である。
ブラックリストに対応したソフトやブラウザを利用する場合、設定するのがサーバである場合と端末の場合が考えられる。有害情報をフィルタリングソフトでとにかく遮断したいという場合、サーバと端末のマシンにちがう会社のフィルタリングソフトをいれるといった地域もある。
ゆるやかなフィルタリング〜子ども用検索サービスの利用〜
フィルタリングという観点からは「ゆるやかな方式」と言えるかもしれないが、ウェブ上には子どもたちにとって不適切なリストをあらかじめ排除してある子ども用の検索サイトが多く登場してきている。例えば、校内にあるパソコンのウェブの初期画面をこのような子ども用検索サイトが出てくるように設定しておけば、完全なフィルタリングにはならないにしても、自然とそこから利用する環境を作ることができる。キーワードで調べたい情報をひきだしてくる経験にもなる。それで不足なら自分で直接URLを打ち込むこともできるわけだ。小学校では、この方法をとっているところが多いようだ。少なくとも小学校の現場では、あまり有害情報の排除に神経質になっていない。
利用そのものを学びの素材とする〜モラルの育成〜
上記フィルタリングの方法は、「不適切な情報はシャットアウトし、子どもたちの目にさらさない」ということが基本になっている。しかし一方で、情報を制限するよりは、そのような情報に遭遇したときにどのように対処するかを学びの素材として取り入れることが情報教育の視点としては重要である。いろいろな状況に出会わせ、自分で判断する力を培うことが重要だ。このことは、有害情報への配慮だけでなく、個人情報を発信することへの影響について判断できるようになることをねらった授業も今後は必要になってくるだろう。
そもそも家庭でもインターネットで自由に閲覧できる環境が整った多くの子どもたちの前では、学校のみがフィルタリングをかけることに意味がないと言っても過言ではない。単に、フィルタリング(=利用に対する規制)を「がちがちに」かけることは、インターネットと子どもたちのかかわりにおいて、くさいものにふたをするだけで根本的な解決にはならない。むしろ、大事な学びの場ととらえ、どのようにカリキュラムの中に埋め込んでいくのか、どの場面で考えさせるのかを議論し、学校も教育委員会も「モラルの育成」について考えていくべきである。 |