『自分で撮った電車の写真を、自分のホームページで公開することができるのか?』
これは、各自のホームページを制作中の6年生の子どもたちが、お互いの作品を見合う活動のなかで出てきた疑問です。
「自分で撮ったものだから問題ないよ。」「でも、電車を所有している人の権利もあるはずだよ。」「電車は公共物みたいなものだから、いいんじゃないの。」等、
学級を二分しての激しい討論となりました。
「では、どうしたら決着がつくと思う?」という教師の問いかけに、「電話をかけて、聞いてみればいい!」という答えが返ってきました。
そこで早速、ホームページで鉄道会社の電話番号を探し出し、コンピュータ室から携帯電話を使って問い合わせてみることになりました。電話をかけるのは、もちろん電車の写真をホームページに掲載しようとしている子どもです。
緊張した声で事情を説明して、質問をしてみると、鉄道会社からの回答は、「許可なく、ホームページで公開することはできません。」とのことでした。
電話をかけた子どもの顔が青ざめました。「これで今までの苦労は水の泡…」と思ったそうです。何せ300枚以上の写真を用意していたのですから。しかし、きちんと鉄道会社に申請をし、手続きをすれば許可がもらえるということが分かり、ほっとした顔に変わりました。
このように外部に電話をかけことになる展開は予測していたので、携帯電話での会話は通話している人以外にも聞こえるような準備をしておきました。ですから、この電話でのやりとりは、学級全員がリアルタイムに聞くことができたのです。
電車の写真の他にも、友だちや先生の写真、アニメのキャラクターやスポーツ選手の画像、書籍やホームページからの引用などについての問題が、次々に子どもたちから出てきました。指摘を受けた子どもは、電話をかけたりメールを出したりして、何とか許可をもらおうといろいろな手段で交渉しました。なかには許可をもらえないもの(アニメのキャラクターなど)もありましたが、そのことはかえって子どもたちに知的所有権の存在を実感させる良い結果となったようです。
本実践においては、ホームページの公開を目前にしている子どもたちに、情報発信に関する問題点について考えさせたことにより、情報発信時のモラルを『自分の問題』として捉えさせることができたと思います。
情報発信の場面においては、子どもたちが被害を受けるだけでなく、場合によっては加害者になってしまう心配もあります。ですから、いきなりインターネット上に情報を発信してしまうことには注意が必要です。校内イントラネットのような場で失敗を体験させることも必要だと思います。そして、自ら問題を発見し、解決する方法を考える活動を通して、情報化社会で適切な活動を行うための、正しい判断力と態度を育てていきたいと考えています。 |