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キーワードで読む情報教育 9
インターネットで自由研究
レポート1
引用のすゝめ
田邊則彦
(神奈川県 慶應義塾湘南藤沢中・高等部)
パクリ? 引用? それとも参考?
本校の高校3年の文系コース履修者は「自由研究」をまとめる授業が必修になっています。高校3年に進級する直前の3月に上級生の「自由研究」の発表会に参加し、研究の進め方やまとめ方の具体的な例に接する機会が設けられています。ここで上級生の苦労話や失敗談を聞き、テーマ設定と進め方の手順を自分でデザインし、担当教員のアドバイスのもとで10月末までに20,000字以上のレポートをまとめるのです。

最初に、レポート作成の約束ごとが示されます。「本・雑誌・Webページの内容を引用してレポートを充実させるのはいいことですが、次のようなことに注意して下さい。」から始まります。いくつかを紹介しておきましょう。
引用元の出典を明らかにする。これは、他の人が出典を見たいと思ったときに、確実に探せるようにするためです。
 
本であれば、「書名」「著者名(+編者名、訳者名)」「出版年」「出版社名」
雑誌の記事・論説・論文であれば、「タイトル」「著者名」「雑誌名」「出版年」「雑誌の巻や号とページ」
Webページであれば、「タイトル」「著者名」「URL」「閲覧した年月日(Webページの内容は改訂されたり、削除される可能性があるため)」
著者が複数なら全員の名前を並べます。名前が示されていないときは、「著者不明」と書きます。
どこからどこまでが引用かをはっきりさせる。[ ]に入れたり、引用の前後に改行を入れて、左右両方のマージンを詰めたりする工夫が必要です。
必要な量を超える引用をしない。長い引用をする必要がある場合は、内容を要約して示すか、引用元の著者の承諾を得るようにします。
レポートの文章全体の骨組みや考えは自分のオリジナルなものであり、「引用」は説得力を高めたり、分かりやすくするために使うものです。
こうしたルールを守らないと著作権の侵害という違法行為となります。ルールを守っていれば、他人の業績は「出典を明記して引用」すれば引用元の著者に無断で「引用」することには問題ありません。
勝手に書き換えたり、勝手に自分の名前で発表したりするのは、「引用」ではなく、「剽窃」「盗用」のたぐいの違法行為です
参考文献はあくまでも「参考文献」であって「引用文献」ではありません。単に写すのではなく、自分の言葉でまとめなおす必要があります。
生徒たちにとっては「パクリ」「引用」「参考」と表現した方が理解が早いようです。さすがに「剽窃」をすんなり読み、語意を説明できる生徒はそう多くはありません。

インターネットはパクリ天国?
インターネットの普及によってWebページの参照が日常的に行われるようになり、適切なキーワードを入力しさえすれば、それなりの情報を入手することが簡単に行える時代を迎えました。学習のための教材リソースが全世界から入手可能になるなんて夢のような話です。1994年に本校がインターネット接続を実現した当時は、教材として使える日本語のWebページはほとんどなかったのです。教材として魅力のあるWebページが洪水のように発信されるに従い、入手した情報を切り貼りしてレポートを作成する生徒が目立つようになってきました。情報を分散・共有することの意義は深いのですが、「情報を切り貼り」するだけで、学習したと勘違いされては困ります。情報のリソースとしてWebページなどを有効利用することは決して悪いことではありません。しかし、それはあくまでも参考であることをきちんと認識し、参考・引用・剽窃の区別をきちんとつけることを学んで欲しいのです。

先生の秘密兵器:パクリ発見ソフト
昨年度の授業レポートの中には、そっくりさんのレポートがいくつかあり、個々にインタビュー形式でレポートの内容について質問したところ、「しどろもどろ」。看破されて青筋が立っていました。しかし教師の仕事は不正を見破ることではありません。先生の秘密兵器:パクリ発見ソフトがあれば、本来の学習指導にエネルギーを割くことができるはず。

カリフォルニア大学のバークレー校では、生徒のカンニングに対抗するためにプログラムの酷似性を指摘するMOSS(Measure of Software Similarity)というソフトが開発されています。参考・引用の断りなく、ある頻度以上で同一の語句の並びが出現することをチェックすることができれば、パクリレポートの検出は実現します。実はすでに米国で開発されているようです。生徒諸君、パクリは禁物!ですよ。

本校の創始者は「学問のすゝめ」を著した福澤諭吉です。これにちなんで「キーワードで読む情報教育」の「インターネットと自由研究」として「引用のすゝめ」をまとめてみました。
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