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キーワードで読む情報教育 10
教えあい
〜子どもたち主催の「パソコン教室」は、どんな教育的意味があるのか?〜
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ここからが始まり…
子どもたちにとっては初日でつまずいた格好になったが、さっそく休み時間が終わった3時間目に予定を変更してパソコン教室についての話し合いが持たれた。

子どもたちからは話し合いの観点として以下の3つが出された。

(1)1年生は何が知りたいのか?
このことについては当然出てきた。この話し合いが持たれたきっかけになったのだから。さっそく1年生が休み時間に習いに来ていた時に言っていた言葉が子どもたちから紹介される。その結果、「ゲームのやり方を知りたい1年生が多い」「インターネットも知りたがっている子はいるけど、いきなりキーボードの打ち方やいろいろなこと(手順)をいっぺんに教えてもわからなくなる。どうやって見れるかだけで良いのではないか?」「キッドピクスのやり方はけっこう知っているので機能について教えてあげると喜ぶと思う」といったような教える具体的な内容について話が進んだ。

さらに、内容から状況について話し合いが移っていった。

(2)教え方が悪いのではないか?
「○○君は自分がマウスを持ってやっていた」「△△君は真ん中にいて1年生がまわりにいた。お客さんは1年生なんだから、1年生を真ん中にしてやるべき」という意見が出てきたことに端を発する。これらについては、あくまでも補助的なインストラクターで良いのではないか?ということで落ち着いた。

(3)人員整理をどうするか?
これは一番深刻な問題だった。せっかく多くの1年生がパソコンを教えてもらいに集まったのに、あまりにもパソコンの台数と受講生の数が合わなくて、教室に入ったとたんに帰ってしまう1年生もいた。さらに、並んでいるうちに休み時間が終わってしまい、多くの1年生から不満が出ていたのだ。結局、「すいているところを教えてあげる交通整理(?)の担当が必要」「やらせてあげる時間を少なくし、(受講生)全員にさわって帰ってもらう」という2つのことが解決策として決まった。

パソコン教室の失敗は2年生の子どもたちに何をもたらしたか?
この後1週間にわたってパソコン教室が引き続き行なわれた。いずれにしても、あの1日目の話し合いが2日目以降の教え方にかなりの影響を及ぼしていたことはまちがいない。もちろん、1年生が1週間でどのくらいのことがわかったのか、満足したのかは定かではない。しかし、あの1日目の失敗で2年生の子どもたちは「教える側の論理だけではなく、教わる側の論理を自分(たち)の中に引き込んでいかなければならない」という当たり前のことを身をもって体験したのだ。

これらのことを教師が口で子どもたちに知らせることは簡単だ。だが、「1年生にとってわからないことがわかる」「満足して帰る」という目的意識を明確にし、自分たちの教え方がどうだったのかについて、振り返る機会をもったことが大きいのではないかと思う。もちろんこのようなことはパソコンでなくてもできることだが、パソコンという素材から子どもたちが学べる大事な一場面だったのだ。

たまたま2年生の教室の周辺にまとまった台数のパソコンが置いてある。そんな中、今回のことで、「学校中の多くの子どもたちがパソコンをやりたいんだなということがよくわかった」という、Yちゃんの感想が印象的だった。

教えてみるということは、自分と目の前にあるパソコンとの関わりにもう一度ふりかえって気づかせてくれる場となる。パソコンのことも、教えるという行為そのものも、わかったつもりでは通らない真剣勝負なのだ。
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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