デジタル表現研究会
D-projectとは? D-allメーリングリスト サイト検索 ホーム
D-project
D-projectのあゆみ
メディア創造力を育成する実践事例
ワークショップ
ユネスコプロジェクト
教材作成
調査研究
カリキュラム検討
ネットdeカルタ
卒業アルバム作成
先生の道具箱
全国に広がるD-project
D-project アーカイブス キーワードで読む情報教育
 
キーワードで読む情報教育 27
学校ウェブページ
中川一史のキーワードへの道案内
大阪教育大学の越桐教授によると、「2000年1月の時点で公開されている国内の小学校、中学校、高等学校、盲・聾・養護学校のウェブページ数の合計の総学校数に対する比率は、昨年同期の11.7%から19.8%にまで増加した」そうである(注1)。ただ、学校がウェブページを公開することへの目的がいくつかあるようだ。ここでは、まずその公開の目的のいくつかを整理してみる。

パターン1:なんとなく…
現在、インターネットに接続された学校がまず考えるのが、自校ウェブページのたちあげだ。つまり、何の意図もなく、インターネットに接続されたからということで、居酒屋に入るとまずビールを頼むように、「とりあえずウェブページ」を作り始める。こういう学校のウェブページは、ほとんどおきまりの表紙と学校長のあいさつ、ちょっとした沿革くらいしか入っていない「おもしろくもなんともない」ページだ。対象や目的が明確でないことが原因だろう。その後、だんだんと充実していく学校もあることはあるが、たいていの場合、そのまま放置される。校内の教員研修としてとりかかり、ビジョンを持っている情報教育主任がいるところはその後充実することもありうるが…。

パターン2:入学案内・地域案内
こちらの方は、パターン1とはちがい、強烈な意思を感じ取ることができる。まずは、入学案内風の学校ウェブページ。特に、私立の学校が多く、いわゆる入学を検討している生徒やその親を対象にしている。当然のことながら、学校の教育方針から特色のある授業・学校行事までもれなくふれてある。そういう意味では、企業のウェブページに相通ずるものがある。担当の大人が(それが教員であれ、広報担当であれ)そつがなく作りこんでいる。

パターン3:教材提供
他の地域の同校種の学校に、地域学習に利用してもらう教材を公開しようという試みだ。例えば、小学校の総合的な学習で米作りを行うとしたら、新潟や秋田など、米作りをさかんに行っている地方の小学校は、地域学習として取り上げている学校もあるだろう。そうなると、そういう学校のウェブページは充実しているので、とても参考になる。ウェブページを見に行ったことがきっかけで、交流につながることもある。また、交流相手探しの手段として、自分たちが取り組んでいるテーマを公開していると、「うちの学校と交流しませんか?」と声がかかる(メールが来る)場合もある。

パターン4:プレゼンテーションの場として
さて、ここまでは、どちらかというと、作成者は教師をはじめとした学校関係者(大人)の場合が多かった。しかし、このパターン4は、ページを作りこむ主役が子どもたちにうつる。ウェブページの作成そのものを目的とした授業は、最近増加傾向にある。子どもたちがウェブページを作る、という活動には、いろいろな要素が含まれているからだ。例えば、中学や高校の技術家庭や情報、総合的な学習の授業では、自分のテーマを決めて取材をし、レイアウトを意識して公開させるプロセスに意味を見いだす場合が多い。ウェブページで公開することにより、多くの人に見てもらえ、また、リアクションも期待できる。このことにより、生徒の励みや自信につなげる、というねらいだ。

パターン5:授業活用
本来なら、筆者はこのパターンを一番望んでいる。授業で子どもたちが使えなければ、わざわざ学校ウェブページを出す意味がないのではないかという思いを持っているからだ。しかし、いざ授業で活用できるように、と考えると、いろいろと工夫すべきことがありそうだ。

一般的にはウェブページを公開するときには、オープンである場合が多い。そうなると、不特定多数の人間が読者になるわけで、その力を子どもたちの授業にどう返していくか、がポイントになる。横浜のある小学校では、3年生で昔、学区にすんでいた人に情報提供をよびかけていたり、6年生の歴史学習で意見を求めたりしている。また、活動や作品を公開して、同じようなことをやっている学校に反応を求めることも有効だ。いずれにしても、ただ、発信するだけでなく、交流を意識した工夫が見られるのが、このパターンの特徴だ。

今後の展開として〜遠くから近くへ〜
とは言え、学校ウェブページの公開は、今後、学校教育の中でより、重要な意味を持ってくるだろうと私は思う。「学校を中心とした地域ネットワーク化」を視野に入れているからだ。先ほど話題にした総合的な学習を中心に、地域の教育力を見直そうという動きが出始めている。数年前まで、あまり考えられなかったことだが、近くの公民館やお店やさんでウェブページを公開するところも増えてきているのではないだろうか。そういうところとうまく人間関係の上でリンクしていけば、学校の活動や授業も今まで以上にダイナミックに展開できるはずだ。学校ウェブページの公開は、学校を地域に開く強力なきっかけ作りになるのではないだろうか?

(注1)
越桐國雄:インターネットの教育利用調査「インターネットと教育」より
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
レポート1
山あり谷あり!? 学校ホームページ作り
山本直樹
(京都府 京都市立桂坂小学校)
レポート2
求められる学校ホームページとは
小林道夫(神奈川県 神奈川大学附属中・高等学校)
D-project アーカイブス キーワードで読む情報教育