一昨年度の指導要領改訂の移行期の教科書より、図画工作科の授業にもデジタルカメラを取り入れた教材が登場してきました。それまで、図工は(これからそう呼びます。)絵を描いてなんぼ、つくってなんぼ、と思っていた者としては「フ〜ン」という程度にしか思っていませんでした。しかし、教育課程で出てきているものを、捨て置くわけにもいかず、「とにかく一回はやってみようか。」と始めたことが、授業でデジタルカメラを取り入れた第一歩だったように思います。ここまでは、普通ですよね。
じゃあ、いったい何をすればと考えてみたところ、こういう結論に達しました。近頃の、子どもたちは、自画像や友だちの絵を描くのを嫌がるくせに、ちょっとでもカメラを向けると、男の子はピース、ピースの嵐、女の子はななめに構えてかわゆくポーズ、めったに逃げ出す子どもはいません。「んーこれだ。自分のPRに使わせてみようか。」と考えたのでした。それには、ちっちゃな写真ではおもしろくありません。ある程度の大きさを持ち、大勢の人の目にとまらなくてはと考えたところ、それにぴったりの場が見つかりました。卒業式です。うちの学校の卒業式は、体育館の周りのかべに、6年生が自画像を描いて、自分自身で制作した木の額縁に入れて飾る習慣が続いていました。この時を利用するしかありません。
6年生に提案すると、色よい返事。早速制作に取りかかりました。デジカメはこの時に活用しました。子どもたちは、3、4人のグループに分かれ、お互いを写真で取り合うこととしました。思い思いの気に入った服を着て、すましてぱっちり。ひとり3枚ほど撮ったと思います。当時(2年前)は学校の児童用のノートパソコンが10台、デジタルカメラも5台ぐらいしかなかったと思います。
写真を撮り終えたチームから、教師によって学校のサーバーに写真を保存していきました。この時が大変でした。次から、次へと撮り終えてデジカメを持って来るグループのほか、「先生、電池ない。」「カードがいっぱいで撮れんわ。」と洪水のように子どもが押し寄せてきました。
次に写真の自分を切り取り、好きな風景に貼りつける。そして、卒業にあたっての子ども自身からのメッセージを好きな字体で貼りつけていく。完成作品は、サーバーの自分たちのクラスのフォルダに入れていきました。プリントアウトは教師とよ〜くパソコンについて知っている6年生のTくんが手伝ってくれました。大きさはA4に拡大することにしました。Tくんは、教師が忘れている日も放課後、パソコン室に来てプリントアウトを手伝ってくれました。この年は、大変な6年生であったはずなのに、とにかく全員がきちんと取り組めたことがよかったように思います。卒業式には、自分たちの自画像ではなく、加工された自分たちの写真に囲まれ卒業していきました。優しくって、すてきな卒業式でした。きっと後輩たちは、来年は自分たちの番だと感じていたことでしょう。
このように、パソコンやデジタルカメラに関して決して恵まれた環境ではなくても何とかなるもんだと思いました。
近頃のデジタルカメラは短い録音をすることができたり、短い動画が撮れたりすると聞きました。まだまだデジタルカメラを使い切ってはいないのですが、これからはデジタルカメラで撮った音や動画を利用した図工の実践もどしどし出てくるでしょう。評価にも使えるかな。そして、いつかは、筆箱のように、ランドセルに必ず入っているようなものになっていくのではないでしょうか。
以上、普通の小学校教師のつぶやきでした。 |