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キーワードで読む情報教育 28
総合的な学習
〜ココが気になる、7つのポイント〜
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気になる5:学びを促進する学習環境は実現されているか?
どこの学校でも学校の外に出ての取材活動はさまざまな学年で見られるだろう。その時に、子どもたちは何を頼りに取材活動を行っていくのだろうか?もちろん今まで述べてきたように、それまでの経験がものをいうことはまちがいない。しかし、どのような経験をしてきていても、どの学年でも、自転車の補助輪のように、何かよりどころになるようなものがあると良い。ある学校では「交流4点セット」なるものが用意されている。インタビューのやり取りや、その前に相手とのアポイントをどうやってとるか、校長先生に許可をもらうための文章などがセットになっている。

総合的な学習の活動では、メディア環境も重要だ。メディア環境ということで何を思い浮かべるだろうか?例えば、「子どもたちが取材をするためのメディア」としてどのようなものがあるだろうか?デジタルカメラ、ビデオカメラ…そして、そのようなものは、どこに何台どのように準備されているのか?子どもたちは自由に使えるのか?そして、コンピュータもしかり、だ。高価なものだからと、あまりにも大事にしすぎていては、宝の持ち腐れになってしまう。

いずれにしても、子どもたちが使いたいときに使いたいような状況になっていることが重要なポイントであることは言うまでもない。

各教室やスペースをどのようにするか、ということも、検討すべき大事なポイントだ。例えば、「図書室の学習情報化」について、考えてみよう。図書室は本を読むところ…という発想から、パソコンを置いてそこにCD-ROMを並べ、マルチメディア図鑑等を充実させたり、インターネット接続をして本で調べるのと同時にインターネット上でも検索できるようにしておく…こうすると、子どもたちの調べ活動も、限られた時間の中で図書室に行くことで、ぐっと広がるはずだ。そういう意味では、パソコンルームだってパソコンがびっしり置いてあるだけ、パソコン(インターネット)をやりに行く場所だけ、というのではなく、パソコンルームの真ん中に作業スペースがあり、模造紙を広げ、グループ活動ができることが望ましい。いわゆる「パソコンルームのワーキングスペース化」だ。もちろん、パソコンルームにそのような場所を確保する余裕がなければ、近くの教室で確保するとか、廊下などのスペースの検討も可能だろう。同様の発想は、教室、廊下のパソコンの分散化、ネットワーク化ということでも言える。少し、固定概念をとっぱらっていろいろと校内で話しあってみてはどうだろうか?

ただし、ここまで述べてきたメディア環境などは、ただ「あるだけ」でなく、どのように機能しているかが重要だ。パソコンルームにパソコン活用マニュアルが置いてあればそれで使いだす、ということではないはずだ。問題はそれが子どもたちに使われているのか(機能しているのか)、に尽きる。

気になる6:外部人材の問題
この項目は、詳しくは「キーワード:外部人材」に譲るが、小学校では総合的な学習は基本的に担任が中心で行っていく。しかし、「担任だけではなかなかやりきれない」という話をよく耳にする。テーマや題材にもよるが、担任以外に校内で総合的な学習のために、どのような指導・支援体制で望むのかを考える必要がある。これまで多くの学校で、外部人材の確保に心血を注いできた。しかし、たくさんそろっていれば良いというわけではない。米作りをやるからといって農家の人が誰でも良いからいてくれれば良い、というわけではない。少しでも子どもたちの学びを理解してくださるような方に来ていただきたいし、そのように打ち合わせを十分に行うはずだ。ここでは教えすぎないということを理解して関わってくださるかどうかは勝負の分かれ目になる。

また、専門家などを外部から招待する総合的な学習の活動をよく目にするが、校内の生き物にくわしい先生に登場してもらう、植物にくわしい校長先生にTT的に関わってもらう、衛生を扱うので養護教諭にいっしょにカリキュラム作りから関わってもらう、という可能性もある。無理がきくという点では、「校内の外部人材」を有効に活用すべきだ。

また、校内でTT(ティームティーチング)の検討は行われているだろうか?ある学校では、各学年に校内からやりくりして+1名の総合的な学習担当教師を配置している場合がある。+1(プラス1)で関わってくれる教師の特性にもよるが、メディア機器のサポートを担当したり、学年で動くときの全体の動きを見たり、その役割もさまざまだ。

総合的な学習では、さまざまな専門家にいろいろな場面で関わってもらう活動が多くなりそうだ。外部の方に関わってもらうことは、子どもたちが本物に出会い、刺激を受け、意欲が高まるだけでなく、そこにさまざまな問題解決場面が生まれるという良さがある。各学校でどのような体制を組めるか、どのように外部の方と関わるかについて、今後問われるのではないだろうか?

気になる7:教師、学校の意識変革は進んでいるか?
意識変革といえば、すぐに「学校が開かれているか」ということが言われるが、ここではそれ以外の4つのポイントについて触れる。

○総合でねらう力をつけるべきは教師
総合的な学習では、子どもたちの「調べてまとめて伝える力」がどのようにつくかは大事なことだ。しかし、「上手に発表しましょう!」と言いながら、そういう教師は他の人に説明するときにメモを読んでいるだけとか、「子どもたちには、うまくまとめましょう!」と言っておきながら、教師は一度に次から次へといくつもの注意、ポイントを出す、というのはよくある話だ。総合的な学習でねらうような力は誰よりも教師にも必要だ。教師も受け身ではいられない。

校内の授業検討会でも他の教師の授業を見るだけでなく、必ず意見を言うしかけを作ってみてはいかがだろうか?ある学校ではポストイット(小さな紙でも良い)を配り、必ず参観した授業について全員がコメントを持ち寄ることを課している。これなら、ぼけっと受け身で授業を参観することはできない。また、プレゼンもぜひ教師がやってみるべきだろう。いかに制限時間内にきちんと言いたいことを言うということが難しいか、わかるはずだ。

○学年間の調整は十分にできている?
総合的な学習では、「つけたい力のつながり」が大事だと前に述べたが、そのような意味では、「つける力のつながりが校内で共有化されているのか」ということが大事なことなのだ。それがしっかりできていると、たとえ3年生で地域を、4年生で福祉をと各学年で内容が変わっても、「どういう力を育てていくのか」という軸がぶれないですむ。

もっともその前に、「他の学年の総合の活動内容、ねらい等を知っているのか」ということからはじめなくてはいけない学校もあるのかもしれないが。

○教師が総合的な学習を楽しんでいるか?
これまで教科学習では教科の目標や教科書があり、まったくレールをはずれることは、ある意味許されなかった。しかし、総合ではその発想を転換する必要があるわけだ。ちょうど、サッカーの攻撃的MF(ミッドフィルダー)のように、試合の状況を見ながらパスを繰り出さなくてはならない。このようなやり方は大変だけど、新たな子どもの姿への驚き・喜びも感じられることも出てくるはずだ。教師が「大変だけど、楽しい」と感じられるかどうかが総合がうまくいくかどうかの分かれ目かもしれない。

○校務をどこまでコンパクトにできるか?
いろいろと教師の意識変革と書いてきたが、一方で準備も何もかも大変なことはまちがいない。そこで、これまでの校務をどれだけコンパクトにするかという努力も学校ぐるみで再検討すべきではないだろうか?全国の学校をまわっていると、地域によって、放課後の時間の使い方に随分違いがあるのだなぁと感じさせられる。当たり前に思っていた校務も縮小できるものがたくさんあるのでは?
中川一史(なかがわひとし)金沢大学教育学部教育実践総合センター助教授
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山中昭岳
(鳴門教育大学大学院(和歌山県 熊野川町立熊野川小学校))
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清水和久(石川県 金沢市立大徳小学校)
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